近年、話題になった一冊
「ユニクロ帝国の光と影」を読了した。
その内容を巡ってUNIQLOが訴訟を起こしたのだ。
特に、最終的に争点となったのは、
店舗責任者の月間300時間以上の労働。
提携先である中国生産工場での過酷なまでの労働の実態を赤裸々にしたからだ。
しかし、この本はそのような告発本では本来はない。UNIQLOとしては、「理想の企業」としての夢を掲げながら労働基準法に引っ掛かれば、社会的なイメージや人件費の高騰につながるとして大いに抗戦せざるをえないのでえる。
著者が本来、書かんとするところは、
UNIQLO高収益企業の中身だったのだ。
その対象のなるのは、
今や世界一のアパレルSPA(製造小売)であり、UNIQLOの目指すところである
ZARAなのである。
UNIQLOは、生産企画から店頭に物が並ぶまでの期間が、おおよそ一年間かかる。
売れ筋の読み、販売量の計画、プロモーション計画。それらすべてを組み合わせて中国、ベトナム、バングラデシュなどの提携先工場に「超大量発注」を仕掛ける。
そこでは、コストの要求も厳しい。
UNIQLOで1990円で売られているポロシャツの工場価格は、500円前後であると明かされている。
それだけではない。
納期を違えれば違約金が発生し、
不良率も許容範囲0.3%とという、業界では異例の契約を結ばされている。
もし、不良の許容範囲を超えた場合は、中国生産工場側のコストで送り返され、ラインをストップしてすべての検品がやり直され、工場側のコストで日本に再輸送される。
工場側は、生地の裁断から縫製までおよそ一ヶ月の期間しか許されない。業界平均は三ヶ月という。
それも、0.59ミリの糸くずがTシャツについていれば不良品としてカウントされる。
UNIQLOの2010年の決算を見ると、
粗利益率 51.7%とZARAの57.2%には遠く及ばない。
宣伝広告費
UNIQLO4.6%
ZARA 0.3%
しかし、
営業利益率は
UNIQLO 16.2%
ZARA 15.6%
と逆転している。
ZARAは、大量発注をしない。
アパレルにおいて、流行の移り変わりは生命線である。それをコントロールするために、お膝元のスペイン国内に工場を持ち、企画から最短では二週間で商品を店頭に並べるという仕組みを作り上げている。
そして、消費者の反応を見て、改善なり大量生産をする。
ファッション性を重視した商品政策は、おのずから高粗利を実現できる。
その分、従業員に還元しやすい会社となり、提携先工場にも適正な価格で発注をすることができる。
UNIQLOのように、中国の提携先工場の女性工員がしばしば夜中の2時、3時まで残業をさせられることもないのだ。
ファッション性と高粗利を会社のバネにしていいるZARAと、定番シンプルで付加価値を上げにくいUNIQLOとでは、スタートからして会社の成り立ちが違ってくる。
話は戻るが、最終的にUNIQLOの方が営業利益率がZARAより逆転してしまったポイントは、その
人件費率なのだ。
UNIQLO12.4%
ZARA 16.2%
ちなみに、ZARAグループは、
UNIQLOに比べて、
売上高では1.5倍強、
従業員数では3倍である。
店長の労働時間が月間300時間を超え、
三年間以内の離職率が50%を超える時期もあり、
休職中の社員の80%がうつ病と報告されているUNIQLO。
柳井正という創業オーナーの理想は強烈である。2002年に玉塚氏に社長を任せるも、その「安定志向」が危険でならない、として3年後の2005年に玉塚氏をら更迭して自ら社長に返り咲く。
そして、65歳勇退を宣言するも後継者を作れることなく撤回。いまだNo.2が社内にはいない。
その柳井正自身もワンマン経営には危惧を抱いている。
「ワンマン経営は、うまくいっている時には最大の効果を発揮するが、時間が経つとかならずツケがまわってくる。
経営もマンネリ化したら終わりだ。一人の人間が全部決めてやるということは、マンネリ化する時期が早まるということを意味する」
任せるだけの人をつくる、ということは経営者にとって最後の大きな大きな難関である。
はたから見れば「なんで任せないのか」と斬って捨てるが、背負ってるものが違う死にたくなるような苦しみを知ってるのは経営者自身だからだ。
柳井帝国が天に伸びようとすればするほど、バベルの塔は実現してしまうのか。
2013年10月。
東京地方裁判所は、UNIQLO側からの訴えを棄却した。
