レイモンド・チャンドラーに、フィリップ・マーロウ。

学生の時に読んだよな。えっ、読んでないか。

「ハードボイルド」とは何だろうかという、男にとってはのっぴきならない、いや、必ず勉強をしてそして涙さしぐみ敗れ去らなければならない、人生の通過点なのである。 フィリップ・マーロウといえば、酒は「ギムレット」だ。

だいたい、右斜め38度上昇志向の男たるものは、レイモンド・チャンドラーのこの小説から「ジン」という辛く、強く、ゲホゲホの飲み口を知ることになる。  

「ハードボイルド」とは何たるかを知らずして、男の美学は語れぬのだ。と人は言う。  

「固いゆで卵に過ぎんぜ、ふふふ」などといえる奴は、まだ見込みがあるけどね。    

そして、「あの」村上春樹がこのチャンドラーの傑作「ロング・グッドバイ」を新たに翻訳したのだ(清水俊二訳は『長い別れ』)。ずっと読みたくて読みたくて仕方がなかったのだけども、なにせ本の厚みも「ハードボイルド」(泣)。  

こんなにもむちゃくちゃ厚みのある-ハードボイルドとはいえ-小説をヌクヌクと読んでおっていいのか、という新たなる人生の問題も浮上してきたのだ。  

そして、このたびやっと読み終えた。  

何度この本をいっそ枕にしたものかと恨むこと数日。ワシには港の数だけ本が待っておるのだ。   

村上春樹は-あのノーベル賞候補のだ-、高校生時代にこの小説を読んで以来40数年間、折に触れて原文と日本語訳を何度も読み返してきたそうだ。    

ロング・グッドバイは別格の存在である。そこには疑いの余地がなく、見事に傑出したものがある。他に抜きん出たものがある。いくぶん大げさな表現を許してもらえるなら、それはほとんど夢のような領域にまで近づいている。 

~村上春樹~

 村上春樹が小説のお手本として大きな影響を受け、夢のような領域とまで絶賛するこの本を読むほうが、もしかしたら「1Q84」よりはハルキ・ワールドを理解できるのかもしれない。  

主人公フィリップ・マーロウの観察力や、視点の細やかさと乱暴さという極端がいい。プロットの繊細な寄り道のしかたがいい。何よりも宝石のようなセリフが散りばめられている。  

「俺がどんな人間か、すこしずつ君に見せていこう。また一緒に飲もう」

 「今夜みたいに?」  

「今夜は二度ともどらない」  くぉぉぉぉぉぉ~~。  

たまらんね。   

ロング・グッドバイ   

レイモンド・チャンドラー著   

村上春樹訳  早川書房   

 ちょいアホにはハードボイルドの資格なしね。 対岸がノース・コリア。










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