男にとってビールとは、この世に生まれてきて良かったどうか、という成否を左右しかねない大事なものである。

 少なくとも、ワシにとっては。  それを、なにがスーパードライだ!超除湿かお前は。  

なにが発泡酒だ!言い訳がましいネーミングなんぞしおって。  

なにが第三のビールだ!オーソン・ウェルズかお前は。  

こで今日、紳士淑女のみなさまと静かに考えたいのは、ビールのお酌についてなのだ。  

 ビールのお酌、というのはあらゆるお酒の中で圧倒的に難しい。   

あら、お酒のお酌なんてどれもこれも一緒でしょ、また偉そうに。  

などと、その脳味噌に一瞬でもよぎる様な人は、一歩前に出なさい。  

椅子に縛り付けて、黒板を3時間ほどキーキーとかきむしってあげます。  

ビールというものは、泡の具合と注ぎたての鮮度というものが大事なのだ。  

この前なんかは、生ビールの泡立ちが悪いなと思いながらひと口飲んでみると、なんとかすかに生臭い匂いが、ほんのかすかにではあるが匂ってくる。これでは泡も立たないしビールのホップの香りが台無しなのだ。こんな場合は、裁判なしで禁固3年ぐらいの刑は当たり前である。  

ビールはまずゆっくりと細長く、高さをつけて上の方からクリーミーな泡を静かに注ぎ込んでやる。そして、真ん中ちょっとあたりで注ぐのを止め、深呼吸を4回ほどしながらこれからの一杯を楽しみに待つ。

 泡が落ち着いた頃を見計らって、今度はグラスのふちの方から黄金色の泡抜き液体をゆっくりと注いでやる。そうすると、みるみる泡が押しあがり、そのうちにコップの最上部に泡が盛り上がっていくのである。  

神聖なる儀式である。  

れは、ビールを注げばいいというものではない。  

ある作家はこれを「ビールをつくる」と表現してはばからない。  

一人でさてさて、ではでは、などと言いながら「つくる」ビールはいいのだが、そうもいかないのがみんなでワイワイやるときだ。みんなと飲める飲める嬉しさと、ビールを大事につくる儀式のできない哀しみがいっぺんにやってくる。  

最初に注いでもらうのは、日本人の儀礼みたいなものだから仕方がないのだが、二杯目からは自分で注いで飲むのがもっともビールはうまいのだ。  

コップが空になってから注ぎ足すのが一番新鮮な泡立ちを飲む最高のビールなのだが、他人のコップが空になる前に注ぎ足すのがいつの間にか日本人の礼儀になってきた。  

グラスの端の方からゆっくりと琥珀色の液体をゆっくりと流し込む。  

上唇に細かな泡が心地よく触れている。  

たまりまへん。

 ワシは、気を遣わせるのが申し訳ないですから手酌でやります、などとビール瓶を自分の手前においておくことがある。どうしてもビールだけは美味くやりたい。    

つまみは美味しいが、ビールがまずいは我慢相成らん。  

つまみは不味くとも、なにはともあれビールだけは美味くやりたいものだ。

数少ないお店でしか提供していない「六本木ヒルズ・ビール」。上面発酵の ヴァイツェンタイプはワシの好み。いまひとつ主張がないのがちと残念。










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