前とうしろ

行機に乗るとだいたい持参した本を読み耽るのが、先日は何気なくJALの機内誌をパラパラとめくってみた。  

ぼくの好きな浅田次郎が連載をしていたのを忘れていた。  

今月の題名は「前とうしろ」。  

浅田氏がソウルと訪れたときに質問をされたひと言から、このエッセイは始まる。  

「日本人はどうしてみなさん、うしろ向きになって靴を脱ぐのでしょうか」  

ソウルのとある料亭で韓国人の同席相手にそう言われたらしい。  

靴を脱いで屋内に上がるのは、氏の知っている限り日本と韓国だけらしい。なるほど、そう言われればそうかもしれない。  

ぼくは、このエッセイを読みながら「それは出船の精神よ」と言いそうになったが、それは早とちりというものだった。  この韓国の人が不思議に思っているのは、靴を揃えて上がる日本人の美しいたしなみを言っているのではなく、「うしろ向きに上がる」日本人の行動についてなのだ。  

「来たとたんに帰り支度をしているように見えます」  というのが韓国人の言い分。  

それは相手やホストに対して失礼ではないのか、といういささかの批判めいた質問になっているわけだ。  

みなさんお分かりのように、これは本質(靴を揃える)だけが重視され、その過程の大事なことが合理化されようとして、いつのまにかそれが当たり前になったと言う良い例なのだ。  

いったん脱いだ履物を、ぐるりと振り返りみずからの手で正面に向け、出来るなれば端に置きなおすというのが浅田氏を含めた一般的な作法の見解でありましょう。  

玄関に上がる時からホストにお尻を向けて上がっていく日本人。  

それを見て、日本人達はいったい何を考えているのかといぶかしがる外国人。 

確かに、非礼と言われれば非礼であろう。  

省略と形骸化したものは、相手には伝わらないのだ。  

 ぼくらももう若者に範を垂れなければならない世代になってきてしまった。  

美味しいお酒の飲み方や、文化教養を教えるのがなにやら格好いいつもりになっていたが、お店に上がる時からが意外と勝負なのだなぁ。    

 

バンコクの宿から見える朝焼け。騒音に包まれる街の少し前の静寂。

前とうしろ










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