メロキュン‼プレゼンツ!ハッピー♡プレゼント バレンタイン編 | みむのブログ

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こちらはス/キップ/ビートの二次小説ブログです。CPは主に蓮×キョ-コです。完全なる個人の妄想から産まれた駄文ですので、もちろん出版社等は全く関係ありません。
勢いで書いていますので時代考証等していません。素人が書く物と割り切ってゆるーく読んでください。

ど、どうしよう。。。。
ネタがかぶった。かぶってたんですよ。
実はメロキュン用に書き下ろしたお話、もう一つあったんですが、


見事にメロキュン会場に掲載されていたお話いくつかとネタがかぶり…
ちょっと変えようと足掻いてみたのですが。。。大丈夫だろうか。


でもアップしちゃいます。

どうぞ~

メロキュンプレゼンツ!ハッピー♡プレゼント




蝶とチョコレート







トロリと溶けたチョコレートに、温めた生クリームを注ぐ。
中心からゆっくりとかき混ぜる。分離しやすいから、ここは慎重に慎重に。
ブランデーを垂らして大人の味のガナッシュが完成。
少し固いガナッシュを、バットの上にポトリと垂らして丸く成形。
冷蔵庫で冷やす。


作っているのは、甘い甘いチョコレート。
どう転んだってあの人の好みではない、甘い甘いチョコレート。
あの人のために作るこのチョコレートは、けれどあの人の口にはいることはない。


胸の中で、一羽の蝶が羽ばたく。


冷えたガナッシュを溶かしたチョコレートでコーティングしながら、キョーコは自嘲に満ちた笑みを口元に浮かべた。
目は……今にも泣きそうだった。




バレンタインデー
その昔、戦時中につき結婚を禁止されていた時代。
愛し合うのに婚姻が許されない恋人達を哀れんで、自分が罰せられるとわかっていながら婚姻の儀を行ってくれた聖バレンティヌスの日。

愛を結ぶ事が、命がけであった時代だ。極論だけれど、その時代に比べたら、現代は恵まれている。

命までは取られない。

そんな大袈裟な自分の思考回路に、今更ながらキョーコはふふっと笑った。


胸の中で、蝶が、また、パタパタと


シンプルなダークブラウンの箱に、小さなトリュフを敷き詰める。
シンプルな、トリュフ。
小さいけれど、甘い甘いチョコレート。


「命までは取られないけど、しばらく使い物にならなくなるかもね。」


玉砕は承知の上。

この胸の鼓動は、いつもならば一分間に70回程度波打つだけだったのに。

いつの間にか住み着いた蝶が

あなたを思い出すだけで、突然暴れ出して私を驚かせるようになりました。


あなたと一緒にいると、急ぎ足で胸を叩いて、「大好き」を訴えるようになりました。


ちょっと黙っていて。
苦しいわ。

静かにして。
痛いのよ。


叱ってもなだめても無駄だった。

あの人が、微笑んで、「ありがとう」と言う度に
あの人が、怒った表情をして、「女の子なんだから。危ないだろう?」
心配してくれる度に

あの人が、あの人が、あの人が、

ーーーただ、
ーーー私の名前を、呼んでくれるだけで


蝶の羽ばたきを抑え続けたこの胸は、もう限界で
あなたの前で、この胸を突き破ってみっともなく溢れ出してしまいそう。

厄介な蝶々の羽ばたきから解放されるには、吐き出すしかなくて
けれど、みっともなく、吐き出してしまうのは、とても、とても嫌だった。

(潔く、終わらせなくては。)


己が身の、危機を感じたのか、
また
蝶々が、パタパタ




社さんに頼んで、彼のスケジュールを教えてもらえば、幸運な事にその日は同じ局での収録があった。
しかも、彼の入り時間は私の仕事が終わった後だ。

「ついてる…」

会心の笑みが浮かぶ。
だって、断られた後。覚悟をしていてもきっと仕事どころではなくなってしまいそうで。

ああ…でも、もう、この思いを、伝えてしまったら
「後輩」として、側による事も、できないのかな?

そう思うと足が竦むけれど、
怖じ気づく心を、懸命に叱咤した。

大丈夫大丈夫。
言い聞かせながらテレビ局の廊下を歩く。

あの人は大人だから、きっと私さえ普通にできれば今までのように接してくれる。

私さえ、しっかりすれば大丈夫よ。


このチョコレートを、渡して、この蝶々の存在を伝えたら
あの人は、けれど優しいから

きっと

『ありがとう』

そう言って、微笑んで

綺麗に、けれど困ったように微笑んで


『ありがとう。君の気持ちは嬉しいよ。』

「でも、ごめんね…?君の事を、共演者の一人としてしか見られない」


「え…」

想像の中の声が、いつの間にか肉声に変わっていた。

混乱に立ち尽くすキョーコの耳に、それまでは入ってこなかったテレビ局内の雑音と共に、鈴を振るような愛らしいけれど哀切な声が届く。

「敦賀さん!いいえ、今回のお仕事がきっかけなんかじゃなくて、あたし、ずっと前からあなたの事が好きなんです!」

真白いワンピースの裾が、ひらりと揺れた、彼女。
連続ドラマのヒロイン。長い黒髪の、可憐な彼女。
彼女の目の前にいるのは、背の高い…



ーーーーああ……


それしか縋るものがないかのように、鞄の紐を握りしめた。

よく聞き慣れた、彼の声が言う言葉は、きっと、私が何度もシミュレートした言葉。

「…ごめんね?」

君は可愛い後輩だ。
けれど、君の気持ちには、応えられない。



キョーコは堪らず走り出してしまった。







どうしようどうしようどうしようどうしよう…!



未来の自分の姿を見てしまった。





胸の蝶々が狂ったように暴れてる。
ぎゅうぎゅうと、胸の奥を締め付けた。

待ってやめて。そんなところに心なんてない。

目からは涙が吹きこぼれた。

どうしてどうして。そんなものを出したって、心は減っていかない。


もっと意味のあることをしてよ‼


泣いたって、意味なんかない。
この胸の鼓動を数えたって、意味なんかない。
何も終わってくれやしない。

「う~~~~‼」

局内の隅っこ。大道具が並べられた廊下の更に隅っこにしゃがみこんで、涙を噛み殺した。

ぎゅうぎゅうと、胸を押さえつけた。蝶々なんて圧死してしまえ。

(どうして今更傷つくの?知っていたはずよ、キョーコ。
わかっていたはずじゃない。)

告白して。あなたが好きですと。
玉砕して、それで、
もう、この不毛な恋から逃れて

前へ、進もうと。
次の日からも、平気な顔で、何もなかったふりをして、
敦賀さん。先輩と。

そう、言えば。言えれば。

「…はっ……あぁ……」

口を押さえつけた掌の隙間から、小さく小さく嗚咽が漏れる。

胸の中の蝶は、いつのまにか無数に増えて、
内側から、ドンドンと胸を叩く。

出してくれと叫ぶ。

たまらず嗚咽に開いた口から、
飛び立つ蝶。

ーーーああ、私は。何もわかってなんかいなかった。

ーーー覚悟なんか、できていなかった。


「うっ…うぅ…好き…です!好きです…!好きです、あなたの事が…‼前から…ずっと…ふっうっ…‼」

なんてつたない。なんて子どもじみた。

潔く、なんて、とうてい無理だったのに、自分を過信しすぎてた。

(好きです。あなたが好きです。)

ありがとうと微笑んでくれるあなたが。
本気で叱ってくれるあなたが。

(好きです。こんなにも好きです。)

昏く嗤うあなたを、苦しそうな表情で震えるあなたを、抱きしめる権利が欲しいんです。
誰よりも近くに寄り添う権利が欲しいんです。

(好きです。ずっと…ずぅっと前から…!)

玉砕覚悟なんて嘘。そんな覚悟ない。
だって誰よりそばにいたい。
断られたら、傷ついて、苦しくて
昨日と同じ後輩の顔なんて作れない。


好きです。あなたが。


「……すき……!」



嗚咽混じりに溢れ出た言葉に、応えがある。


『ーーーごめんね…?』


ガツンと頭を、殴られたような衝撃。
脳内にリプレイされる言葉が、胸をキリキリと締め付ける。

知っている。わかっている。だって彼は、私を好きになんてならない。

『ごめんね…?』

脳内で彼が、女の子を哀れんで微笑む。
そして、綺麗な声が、大好きな声が、困ったように言うのだ。

『君の事は大切な後輩だと思ってるよ…。』







ふぅふぅ言いながら、なんとかかんとか息を整えた。
ズズッと鼻水を啜って、今更ながらに鞄からハンカチとティッシュを取り出す。

「バカね、キョーコ。わかってたはずよ。何を今更…」

ぐいっと涙を拭いて、立ち上がった。
酸欠で少しクラクラするけれど、立ち上がって、埃を払う。

(…今日は帰ろう。)

こんな顔では、玉砕も何もない。
玉砕の前に、心は中途半端にポッキリと折れてしまった。
長い長いため息をついて、踵を返そうとした所へ、ゴロゴロ…と台車を転がした人物が通りかかった。
泣き腫らした顔を見られたくなくて、顔を俯けて通り過ぎようとしたキョーコの腕を、思いのほか強い力で台車を押す男性が引き止めた。

「やっぱり…!キョーコちゃん。どうしたの?蓮とは会えなかった…の…」

台車を押していたのは蓮のマネージャーの社だった。
明るい声が、キョーコの顔を見てみるみるしぼんでいくのを、キョーコは申し訳なく思った。

「どうしたの?あいつが何かしたの?」

違います。会えてすらいませんもの。
敦賀さんが私に何かするなんて、不可能です。

涙の理由を尋ねる優しいマネージャーに、そう伝えたいのに、喉が詰まって言葉が出なかった。
ただ首を横に振るのが精一杯のキョーコに、社の眉間に皴がよる。

「どうして?行き違うことはなかったろ?だって、あいつ、君を待って…」

「社さん…!これ、敦賀さんへのバレンタインチョコレートですよね!」

声が復活したキョーコは台車の上の段ボールを指差して言った。

「え…?うん、そう…だけど…」

キョーコの勢いに、思わず素直に肯定してしまった社に、キョーコが泣き腫らした目のままにっこりと笑った。

「すみません、社さん。一つ、これも入れさせてください。」

言ってキョーコは鞄から取り出したダークブラウンの小箱をひょいと段ボールの中に入れた。

「えっ…⁉ちょっとちょっとキョーコちゃん‼」

「大丈夫です。チョコレートですから。分別は合ってますよね?」

お酒やアクセサリー等の物と、食べ物の段ボールは分けてある…が、そうではない。キョーコが口にした食べ物の名前を聞いて、社はますます慌てた。
キョーコの、蓮への、初めてのチョコレート。


「そんな!チョコレートなら尚更」

段ボールから紛れてしまいそうになるチョコレートを取り出そうとする社の手を、キョーコが全身の力をこめて止めた。

「知ってます。敦賀さんが受け取ったチョコレートを召し上がらない事くらい。…だから、ここに入れて欲しいんです。」

だって、どうせ食べてもらえないものだって、わかってたものだし。


「私からの、本命チョコ、なんて。あはっ…笑っちゃいますよね。」

間近でかち合った社の真剣な目に、キョーコは一瞬驚いた顔をして…すぐにおどけて笑った。
どう贔屓目に見ても大失敗しているキョーコの笑顔に、社は顔を青くした。

「行き着く先は同じなんですから…ショートカットしても、いいじゃないですか。」

他のチョコレートといっしょくた。
埋れて見えなくなってしまえばいい。


蒼白な顔で社が首をブンブンと横に振った。

「よくない!よくないよ…!」

「いいんです…‼」

だってこんなものは所詮
届きっこない。
彼は私なんかを好きにならない。

他に好きな人がいるあの人には…!

キョーコが声を荒げた所で、

「社さん」

まるで場違いな声と共に、あの人が現れた。

「スタッフさんが、次の打ち合わせ、事務所に確認したいことがあるからマネージャー同席でって…」

「蓮…!」

救いの神が現れたと言わんばかりに表情を輝かせる社を見て、蓮は首を傾げた。

「社さん…?と、最上さん?」

社の影に居たキョーコにやっと気づいた蓮は、視線をそらせたままのキョーコにまたも首を傾げた。

「どうし…」

声をかけて近づこうと一歩、蓮が踏み出した、それがヨーイドンの合図だった。

ダッ…‼

脱兎の如く逃げ出したキョーコに蓮は呆気に取られた顔で見送ってしまった。

「蓮‼」

「はっ…?え…?どうしたんですか彼女…」

「受け取れ!お前が今日首をながーくして待ってたもんだ‼」

段ボールから一つ、小さなダークブラウンの小箱を取り出して蓮の手に押し付けた。

「彼女からの、チョコレート!本命チョコだよ!」

「えっ!チョコレート?…本命?」

目を丸くする蓮に、社は地団駄を踏んだ。

「寝ぼけた顔してないでとっとと追え‼追いつけなかったらこれから先、お前の呼び名はへたれで確定だからな!」

スタッフの前だろうが共演者の前だろうがそう呼ぶからな‼


はっと表情が切り替わった蓮が駆けていった背中を見送って、社は疲労に満ちた顔で台車を押した。
そもそも、こちらには荷物運搬用のエレベーターがあるから向かっていただけだったのに、とんでもない所にでくわしてしまった。

エレベーター脇に積み上げておいた段ボールに、追加の段ボールを積みながら、社はどうでもいいことに気づいた。

「まさか、リアルに地団駄を踏む日が来るとは、思わなかったなぁ…」

言って、本当にどうでもいいことだと社は長い長いため息をついた。




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と、いう。。。
話を、書いてたんですけど。
大丈夫…ですかね?

前回は両思いの二人でハピバ。
今回は片恋の二人でバレンタイン。
に、してみましたー。
兄さんガンバー

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