こんばんはー( ´ ▽ ` )ノみむです。
遅れました…が、皆さんもご存知。メロキュン企画リターンズに恐れ多くも参加表明をさせていただきました。。。
先日のブログのsssの続きみたいになってます。よかったらそちらからご覧いただけるとよりよいかもしれません。
じゃあ、こちらは後篇、ってことにしときますかね←そんな適当な。
ではではどうぞー
贈り物リクエスト 後篇
花びらを重ねたような柔らかなドレス
カットの美しいスワロフスキー
華奢な金のブレスレット
鮮やかな大輪の赤バラ
童話に出てくるようなガラスの靴
彼女に似合うもの
彼女を彩るもの
初めてプレゼントを渡した夜を思い出して、蓮は思わず笑みを零した。
差し出したのは一輪の紅い薔薇。
可愛いコックさんの、潤んだ瞳を思い出す。
あれから、もう五年。
彼女へのプレゼントを抱えながら、水混じりの雪を踏んで、彼女のいる家に帰る。
どんな顔をするだろうか。
驚くだろうか?
怒るだろうか?
喜んで…くれるかな?
東京は10年に一度の大雪だと言う。
道中、そこかしこに作られた雪だるまを微笑ましく感じるのは、自分の心が浮かれているからか。
朝はなんとか生きていた交通網も今や完全に麻痺しているという非常事態のはずが、事前に知らされていたからか、都民はなかなか楽しんでもいるようだ。
角を曲がれば彼女のアパート…という所で、聞こえてきた声に目を見開いた。
「だ、大丈夫ですか…⁉」
聞き慣れた声。まさかと思って道を急げば、角を曲がった先、雪道に転んだお婆さんを助け起こそうとする女性がいた。
真っ赤な傘を置いて、両手を使ってお婆さんを助け起こそうとしている彼女の髪にも肩にも、雪が降り積もる。
なんとなく、先に起こることに予想がついた蓮は急ぎ足で歩み寄った。
「がんばって。よいっ」
しょ…と力をこめた所、お婆さんが立ち上がるのに成功した代わりに、案の定、滑りやすい路面を踏ん張った彼女がずるりと後方に滑る。
「うわっ…とと…とっ…とっ…とっ…」
「はい、ご苦労さま。」
どさ…
彼女を抱きとめて顔を覗き込めば、道中あれこれ思い浮かべていたどの表情とも違う表情。
ポカン…とした表情の後のしまった…!の表情。
蓮はやれやれと溜息をついて彼女を立たせてやる。
歩道に投げ出されたお婆さんの傘を拾って差し出すと、蓮の姿に目を丸くしていたお婆さんはたどたどしくお礼を言ってゆっくりと雪道を去っていった。
「…で?」
次に赤い傘を拾って差し出すと、彼女は気まずそうに視線を逸らして受け取った。
「こんな時間にこんな天候の中、どちらへおでかけかな?お嬢さん。」
彼女を受け取るために咄嗟に放り出してしまった紙袋と傘を拾う。
中身…無事か…?
うむむと眉を寄せた蓮に、キョーコが言った。
「…今夜の飛行機で成田に到着予定では…?」
悪あがきに似た確認だ。蓮はことさらゆっくりと振り返った。
「今朝到着したんだ。」
早朝到着の便になんとかすべりこみ、瀕死の交通機関を乗り継いで東京までたどり着いた。
「家で待っててって、言っただろ?」
「早めたなら早めたで、教えてくだされば…」
もじもじと足元の雪を足先でいじるキョーコに、
「まったくもう、危ないだろ。現に転びかけてたし。しかもそんな普通のコートでこの雪の中出かけようなんて」
「つ、敦賀さん、中に。とにかく中に入りましょう?冷えますから…!」
雪降る中、始まりそうなお説教にキョーコが慌ててアパートの玄関に促した。
最上キョーコ 23歳
自宅アパート玄関から5m
あえなく確保
「予定を早めることはあっても、遅くすることはないって、言っただろ?」
「また無理を…」
眉をしかめながらも金色の髪から水に変わってしまった雪をキョーコはタオルでぬぐった。
空港から直行したために、蓮の姿は素のままだ。
困ったようにしかめられたキョーコの顔をチロリと盗み見た蓮は、隙をついてまだ寒さに赤いままの頬にキスをした。
「…‼」
「ただいま?」
あわあわと口をわななかせるキョーコに首を傾げて言ってみれば、キョーコはますます顔を赤くさせて俯いた。
「ただいま。キョーコ」
言って細い腰を引き寄せれば、待って待ってと言わんばかりに手で胸を押さえられた。
「お…おかえりなさい」
「うん」
彼女の言葉に知らず頬を緩めれば、彼女は何故か目を潤ませて俯いた。
「あの、ごめんなさい。お荷物、大丈夫でしたか?」
「う…?うん。どうかな…」
ガサゴソと小さな箱を取り出すと、蓮はそれをキョーコに「はい」と渡して勝手知ったるとばかりにコーヒーをいれはじめた。
「敦賀さん…?」
「開けてみて」
赤いリボンを解いてパールホワイトの包装紙を開ければ、宝石のようなケースに入ったルージュ。
「プレゼント」
蓮の言葉に、キョーコが柳眉を逆立てて抗議の声を上げた。
「何を言ってるんですか!敦賀さんの誕生日であって、私の誕生日じゃありませんよ‼」
(言うと思った)
蓮は二人分のカップをソファまで持って行くと、しかしそんな心中はみじんも見せずにしれっと言った。
「そうだよ?」
「は?」
「それは、俺のプレゼントのためのものです」
コーヒーカップを渡して代わりにルージュを受けとる。
引き出してみれば、果たしてルージュは無事だった。つややかなピンクベージュ。
「ん、大丈夫みたい。はい、じっとして。」
抗議を封じ込めて、彼女の唇を彩れば、思った通り。愛らしいピンクはとても彼女に似合う。
彼女に似合うもの。
彼女を彩るもの。
それを堂々と贈れる特権。
笑みを深める蓮に、キョーコは頬を赤らめながも困惑の表情を崩せない。
「敦賀さん、だから今回は私じゃなくて」
「ん、キョーコ。今回はプレゼント、リクエストしてもいい?」
「えっ⁉」
「もう用意しちゃった?」
「いえ、それが…迷ってしまって…まだ…なんですけど」
今回は、お誕生日より前に帰国なさるし、もうこうなったら欲しいものを直接聞いて、いっそ一緒に買い物を…あわよくばデートを…なんて大それたことを考えちゃったりしてたりして…
でも待って。変装すれば大丈夫なんて思ってたけど、やっぱり甘いのかしら。騒ぎになる?なっちゃうの?どうしよう‼
ぐるぐる目を回すキョーコの肩を子供の様に小さく揺すって蓮は尋ねた。
「じゃあ、リクエスト。してもいい?」
はぁ…と頷くキョーコに向き合うと、蓮はニッコリと笑った。
「名前、呼んで」
「は…」
「だから、名前。敦賀さんじゃなくて。久遠って呼んで。」
「はひへぇ⁉」
「プレゼントは、それがいいな。」
ルージュはそれを彩る飾りです。
言うなれば、プレゼントのリボン。
ニコニコ笑って見つめれば、キョーコは艶やかなピンクの唇をあわあわと開け閉めさせた。
「なっ…だっ…えぇ⁉」
「だって、君、未だに俺の事を『敦賀さん』って呼ぶだろう?」
「うぅ…」
「久遠って呼んで、キスしてもらおうと思って、張り切って帰ってきたんだ、俺は。」
「要求項目増えてるー‼」
キャー!と叫ぶキョーコに、変わらずニコニコ笑いながら、金色の髪を揺らして蓮は首を傾げた。
「あー。楽しみだな。誕生日が。」
愛しい人へのプレゼント
あなたが喜んでくれるもの、
あなたを彩るもの、
あなたに似合うもの、
あなたが好きなもの。
どんな顔をしてくれるかな?
喜んでくれるかな?
そんな当たり前のことを、許されたこの『関係』この『特権』こそが、
何よりの贈り物です愛しい人。
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