砂漠の国の物語 外伝 2 おまけ | みむのブログ

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こちらはス/キップ/ビートの二次小説ブログです。CPは主に蓮×キョ-コです。完全なる個人の妄想から産まれた駄文ですので、もちろん出版社等は全く関係ありません。
勢いで書いていますので時代考証等していません。素人が書く物と割り切ってゆるーく読んでください。



ああ…またしても

続けてみたはいいけれど、

タイトル…適当すぎてまた後悔…


続きです。
ひたすら、甘く甘く甘やかす王様です。
私的にだいぶ砂吐き注意なんですけど…大丈夫よ、どんとこいって方、どうぞ~






懸命に堪える嗚咽が、引きつる息が、かわいそうで

「キョーコ」

「…ふっ…ぅ…」

「キョーコ」

「や…離し…うっ…」

ほろほろと零れる涙をぬぐう手も、長い腕から逃れようとよじる身体も、いつもの王妃姿から想像もつかない位に幼い。
当然だ。彼女はまだ若い。こんなにも多くのものを背負うには、この肩は細すぎる。
ついさっきまで、確かに感じていた怒りも、憤りも、霧と消えた。

だって、こんなにも愛おしい。

どんな、小さな災いからも、彼女を守ってあげたいのに。

「キョーコ…」

「離してくださ…い…」

はぁ、と大きく息をついた彼女が、比較的はっきりした声で、告げた。

「大丈夫…です。大丈夫ですから」

背中に覆いかぶさるようにしているから、その表情は見えないけれど、見えなくたって、わかる。

涙は、きっと、止まっている。

けれど

「なんにも大丈夫じゃないよ…」

「…何故、このような、ところに?陛下…」

「キョーコ…」

「まだ、今夜は会見を希望していらっしゃる長さま方がいらっしゃるでしょうに…」

「キョーコ…!」

王妃の言葉で、王を諌めるいつもの声音。けれど、震える肩に、ひきつる声に、たまらず力をこめて無理矢理に振り返させれば、
目があった瞬間に、みるみるうちに黒瞳に涙が盛り上がった。

ーーー目があっただけで

にわか作りの王妃の仮面はあっさりと剥がれてしまった。剥がされてしまった。

ゆるゆると、首が横に振られる。

「や…何も、聞かなかったことに、してください…」

お願いでございます。陛下。どうかどうか。

あんな、自分勝手な、言葉

平気なふりをして

醜い嫉妬など

気づかなふりをして

それを貫き通してみせるから

あなたも、どうか、そうしてください。

「お願いです…!」

とうとう決壊した涙の堰に、その懇願に、胸を刺し貫かれたように表情を歪ませたレンはようよう、声を絞りだした。


「…無理だ」


声も、華奢な肩を掴む手も、情けないほどに震えていた。
キョーコは身をよじって泣いた。泣いて、泣き伏した。





いつかのように、膝の上に細い彼女を載せて、謝り、許しを請うキョーコの涙をぬぐい、頬にキスを
キョーコが今、欲している言葉もやらずに、眦にキスを
長い黒髪をすき、額にキスを

嗚咽が落ち着いてきたのを確認して、レンは口を開いた。

「聞いて、キョーコ」

覚悟を決めた声音に、キョーコは居た堪れなくて思わず俯く。
だって、あんな事を言って、こんな風に泣きじゃくってみせて
優しい彼が優しい慰めをくれる事くらい予想がつく。
駄々をこねる子供と同じ。
優しい言葉を強請っただけだ。

「君にどんなに頼まれても、もう俺はハレムに行きたくない」

子供染みた言葉に、キョーコは思わず顔を上げて、ポカンと口を開けた。

「あそこにいる女達を、君に対するように愛するのは、無理だ。」

ーーー無理だ無理じゃないの話じゃないのだ。

しかし、尊敬、尊崇する彼の口から堂々と発せられた言葉を、キョーコの頭は処理できない。

レンは重く長い溜息を吐いた。

「君は知らないだろうけど、君が嫁ぐ前…」

彼が凍てつく目をしていた頃

王の慰めに、臣達はハレムの娘を王の閨にあげようとした。

「…君は知らないだろうけど、あそこにいる人達は、身体が弱い人ばかりなんだよ…」

打診した姫達は、口々に身体の不調を訴え、招きを拒否した。
女性を憎む暴君の仕打ちを恐れての事だった。
時には郷の親が危篤だと、里帰りを希望するものもいた。

レンはそれを許した。
務めを果たすのも難しいほどの不調ならばと、嘘と知りながら多くの姫に暇をだした。

拒否する姫を、逃げる娘を、捕らえる気も責める気も起こらなかった。

あの頃のレンを思えば無理もないことだけれど、王の命に背くなど常なら考えられないことだ。

怒りは感じなかった。権威を失うのではと、予測はよぎっても、それに恐れを感じなかった。


ただ、がらんどうになる自分の内を、じわじわと実感していった。



ーーーーがらんどうの、身体

ーーーー何も感じない、がらんどうの



「…君だけだ…」

抱きしめれば、すっぽりと覆いかくしてしまえるほどの、小さな姫。

あの、初めての、夜
まっすぐと、向けられた夜色の瞳

「君だけだ。…君だけだ。愛していいと言ったのは。愛してくれると言ったのは。」

誰もが怖れたのに。誰もが恐れて拒んだのに。

君は怖れながらも、震えながらも、触れてくれた。

ーーー怖れてくれてもいいんだ。だって、恐ろしい男だったのだから。
力もあり、権力もあり、しかし慈悲もなく、相手を傷つける言葉ばかり吐いていた。傷つけてばかりいた。
恐れてくれてもいいのだ。…恐れるというのは、きちんと見てくれた証拠だから。震えているとわかったのは、震えながらも触れてくれたから。


「君だけだ…愛しいと、思ったのは…」


君にだけだ。触れようとして、手が震えたのは。
傷つけてしまわないかと。
壊してしまわないかと。
暴君を恐れさせたのは、拒絶の言葉ではなく、非難の視線ではなく、
姫の腕の細さだった。



こんな愛を知ってしまったら、偽りの愛など囁けない。



「何度でも言おうか。百夜でも千夜でも、君に捧げようか。君が愛してくれるなら」

甘い甘い、愛を囁いているのに、王は泣きそうな顔をしていた。

「愛している…君だけだ…」

華奢な両手を、自分の手でまとめて包んで、祈るように額につけた。



「愛して欲しいのは君だけだ」





空気すら微動だにしない沈黙の末、レンが視線を上げた。
恐る恐るあげられた視線は、すぐに柔らかく優しくたわむ。

「キョーコ?」

掬うような色気滴る視線に、真っ赤な顔のキョーコが俯いた。

「…しっ…しかし…!」

「愛しているよ…」

なにか反論しようとするキョーコに、有言実行とばかりににっこりと笑って愛を囁き、目の前の小さな手に音を立ててキスを落とす。
まだ足りないかと、さらに口を開こうとするレンを、真っ赤な顔のキョーコが慌てて止めた。

「違います違います!足りてます!足りてますから!そうではなくて…!」

あわあわと目を回すキョーコを膝の上で抱きなおして、「まぁ、君の言いたいことはわかるよ」と、少し不満気にレンは言った。もう少し、冷静さを失っていてくれてもいいと思う。
…彼女はまだ、ハレムの存在意義について懸念している。

「実はこれは、先代からの計画ではあるんだけど」

「先王の…?」

「うん。…先代はハレムを解体するつもりだったんだ。」

「…………はっ?」

「今回の会議でも実感したよ。ハレムは解体する」

とんでもないことを言い切ったレンに、思わず他に聞いた者はいないか、キョーコは慌てて周囲を見渡した。
当然ながら誰もいないが、もし聞く者がいたら何としてでも口止めしなくてはならない。

慌てるキョーコに対して、レンは泰然と頷いた。
今回集まった長の人数に、手応えを感じた。紛争は治まって久しい。長達は領地を空けてよしとしたのは、脅威をそこに感じなくなったからだ。
街道を整備したのも大きく影響している。首都までの移動時間や危険性が大きく減った。
長達が定期的に集まるならば、何もハレムにいる姫を通じて意見を述べずともよい。
まだ従順に中央に従っているとは思えない族長ばかりだが、この国の形に、利得を見ている長は多い。逆らうよりも倣うこと選択している長達。
人質、という効果も影響も薄れつつある。
王族に取り入ろうと娘を送りいれる長はますます増えるだろう…今回の元凶、北の族長のように。
しかし、レンにしてみれば数多ある部族とつながりを持てる有効なツールが確立したならば、金ばかり食うハレムなど不要だと考える。

先代も、年々膨らむハレムの出費を見て、そう感じていたのだろう。準備を進めていたのだ。

変化は少しずつ。
当事者達にも気づかれぬように。
穏やかな波が、砂を少しずつ掬うように。
それが理想だったが、他ならぬレンのせいで急な変化を遂げてしまい、北の族長を動かしてしまった。

「なにせ、大きな…俺からしてみたら古いだけだけど、歴史ある機構だ。俺の代でも叶わないかもしれないけど…キョーコ、王妃さま。俺の共犯者になって。」

覗き込む榛色の瞳が、イタズラに光る。

「共犯者…」

「言うつもりはなかったんだよ。君は君の仕事をしているだけでよかったから。今いる彼女達を、まとめてくれているだけでいい。彼女達のわがままを聞いて、君の判断で諌めて、君の判断で叶えてあげればいい。」

他には何もしなくていい。

「ただ、黙っていて。君は俺の、共犯者なんだから…」

胸が締め付けられたのは、怪しく煌めく色香を含んだ声にか、とんでもない秘め事を聞かされたからか。

ただ、先王からの計画だと言う言葉と、現に縮小された現王のハレムに納得もして、
なんだか上手く騙されているような気もして。

レンが並べた理屈も現状も、咄嗟には反論が浮かばない。それがよいことのようにも思ったし、よくないことのようにも思えた。

ただ、彼が嬉しいそうにニコニコと笑うので、キョーコはひとつ、小さく頷いた。





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砂ーーーーーー!!



おまけ…長い…

なんかすみませ…OTL

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