大林宣彦監督の尾道三部作には、

新尾道三部作、というものもあり、

新尾道三部作は

「ふたり」という映画から始まりました。

なんでも出来て、頭がよくて、

美しい姉の千鶴子と、

鈍臭くてパッとしない妹の美加。

そんな姉が事故で亡くなり、

千鶴子に依存していた母を支えるために

美加が奮闘するうち、

千鶴子が幽霊となって姿を現し、

ふたりで力を合わせて

困難を乗り越えていく物語。


その物語は私と姉の物語のようで、

(私の姉は生きてますが)

こちらも何度も何度も繰り返し観ました。


映画の中で、

姉の代わりに自分もピアノを弾いて

母を元気づけようと

発表会に挑む場面が一番好きです。

私の姉も、

数年後に私も発表会で弾いたことのある

シューマンのノヴェレッテン。

こんな感じで私の姉も

私の練習をみてくれていたので、

この場面を初めて観た時は驚き、

尾道に行ったら、この場面のロケ地、

浄土寺にお詣りしたいと思い続けてきました。


この日はとてもよいお天気だったので

尾道駅前から自転車で。


ひたすらに坂を登っていきました。

この道も映画に使われていた、と

ペダルを踏む力が湧きます。

到着すると、鳩が羽ばたきました。

歓迎されてる〜♡と脳天気に喜ぶ私。

河津桜も咲いていて、美しい境内。

静かで美しいお寺でした。


貸切状態の境内で、

鳩の餌を少し手にしてみた瞬間、

すごい勢いで鳩たちが飛んできました。


ヒッチコックの「鳥」の

ロケ地巡りのような状態に。


でも不思議なことに、
すごい数の鳩だったのに、
糞害が全くありませんでした。
自分にも、境内にも。
やっぱりこの鳩たちは
幸福を運んでくれる鳩たちなのでしょうか。
(食いしん坊だけど)

門の内側から見る風景は

穏やかで美しく、

海から響いてくる

船の音に心のリズムが重なります。

絵馬の鳩もたくさん。

頭上にも鳩がたくさん。

この階段を自転車を担ぐ自信はなく

来た道を戻っていくことに。

この風景も、何度も映画でみた風景。


初めて来た場所なのに懐かしい。

映画の場面とともに、

リビングで繰り返し「ふたり」を見る私に

「まーたみてる。」と

隣に座った姉の声が蘇ります。


次は姉と一緒に来れたらいいな。


美人で細くて賢くて、何でもできた姉。

でも、お菓子だけは作れなくて、

毎年バレンタインのケーキを

代わりに作ってあげていたことは、

今でもふたりだけの秘密です。