九頭竜川という鮎釣りの盛んな川の
近くに住みながら
鮎の美味しさをあまり感じてなかった私。
ですが、昨年、稚鮎の唐揚げを
エンゼルコーヒーさんのランチで頂き
いきなり大好物になってしまいました。
鮎がこんなに柔らかくふわふわな
美味しい魚だったとは。
エンゼルコーヒーさんが今年6月で
閉店される時、
「くらむぼんさんに今年の鮎を
食べさせられなかったことだけが
心残りです。」
とマスターがおっしゃってくださる程に
鮎好きになっていたのでした。
今年も九頭竜川で鮎釣りが解禁され、
少し過ぎた7月半ば。
マスターから「鮎をあげる」と
お電話が。
釣りあげた当日の鮎の美しいこと!
こんなにたくさん頂いてしまいました。
1ヶ月ぶりにお会いするマスターは
Tシャツ短パンですっかり日焼けして、
まるで夏休みの少年みたいで、
ああ、この人はいま、心から自由なんだな、と、
しみじみ感じました。
経営から離れることが
こんなにも輝きを放つのなら、
やはり、繁盛しているうちに、
自分が自由に動けるうちに幕を閉じるのも
素晴らしい選択のひとつだと思いました。
先日の鮎神事の絵馬も
お渡しでき、
ご家族のお元気な近況もお聞きでき、
「私、鮎が欲しいのではなくて、
って、頂いてるけど、でも
もうお会いできないと思ったマスターの
お元気な姿が見れて、本当に嬉しいです。」
と正直にお伝えすると、
「私もです。家内も喜びます。」
と、日焼けした手を窓から振りながら、
「また釣ってきますからね!」
と、美しい夕焼け空の下、
車を走らせて行きました。
何が何でも綺麗に頂きたい、と、
鱗を綺麗にとり、排泄物を搾りだし、
化粧塩をたっぷりに、まずは塩焼き。
そして、再現したかった
エンゼルコーヒーさんの鮎の唐揚げ。
丁寧に開いて、叩いて骨を柔らかくし、
少し低めの温度でゆっくり揚げました。
頑張ったけれど、マスターの唐揚げには
程遠い。
でも、その程遠さが、
「お金いらないから」と食べさせてくれて、
「美味しいー!」と暴れんばかりの私を
ニコニコとカウンターの向こうから
笑いながら見守ってくれた人たちを
思い出させてくれるのでした。
あの場所はもうないけれど
私はこれからも
ずっと鮎を見るたび、食べるたび、
あの優しい時間を思い出す。
場所はなくなっても
自由に会えなくなっても
大切な想いはずっと
自分の中にあるのです。
こういう思い出を持てることが
しあわせというものなのだと
思うのです。たぶん。