「断食」は体にいいのか?

当院に来られる患者様からも相談されたことがあります。

 

体のしくみを知れば、おのずと答えは出てきます。

 

「なぜ、人は食べるのか?」

その何故は、

食べたもので体は作られ、

そして食べたもので、その体を動かすことができるからです。

つまり、

「食べなくては生きることができないから」という事になります。

では、

「食べない」という事は、

生きるという事と逆の事。になります。

必要な栄養素がとれないという事は

体を作ることも、体を動かすことも出来ないのです。

 

「当たり前」と思うかもしれませんが、

簡単に一食抜いたり、頻繁に食べない状態でいたりする時

「体の中でどういうことが起きているのか」ということまでは、

皆さんあまり考えていないと思います。

でも考えていなくても、確実にその体の中では

少ない材料で何とか作る(しかない)・・・という事が起きているのです。

(欠陥住宅という言葉が思い浮かんでしまいます・・・)

あなたは自分の大切な体を欠陥だらけの体にしたいですか?

 

そして、食べ方も大事になります。

食べ方がどう体に影響するのかという事も、ご理解いただければ

より、「食事を抜くことが体にダメージを与えている」という事が分かります。

 

なぜなら・・・

生まれてから死ぬまでにずっと食べ続けているという事は

その間ずっと内臓が働き続けています。

ですから、その内臓をいたわることで、

内臓自体を長生きさせることが、命を長生きさせる・・・

つまり健康でいられるという事になるからです。

食べ方ひとつで内臓に重労働させるか、働きやすいようにしてあげるか

分かれ道なのです。

 

(そんなに長生きしたくないという方もいるかもしれませんが、

長生きできるかというよりも、病気になる事が厄介なのです。

病気で生きながらえることはとってもつらいですよ。

病気になった人に聞けばわかります・・・

投薬、食事制限、かさむ医療費・・・心身ともに苦痛を強いられる・・・

つまり、「長生き」とは健康で居続けた先に起こる「結果」です。

それに内臓が健康という事は若々しいという事です。

長生きしたくないけど若くてキレイでいたいという事はありえないのです。

若さ=健康=命も必然的に伸びるという事になるから・・・

もちろんそれぞれ生まれ持った生命力の違いはあると思いますが…)

 

話を戻しましょう。

内臓をいたわるには「食べる回数」と、「量」、それに「何を食べるか」

が重要です。回数については前回の記事を参考にして下さい。

何を食べるかはそのもうひとつ前の記事を参考にして下さい。

(もう少し細かく「食べるもの」については追々記していきます)

量については人それぞれ違うので・・なぜなのかも含め今後記していきます。

今回は断食についてです。

 

もう一つ、考えなければいけないのが

血糖値の問題です。

断食し、また食事を始めた時の血糖値の上がり下がりがとても体に負担がかかる

という事です。

重湯から始め徐々に回復させるようですが、

準備も含め元に戻るまでの期間をトータル的に考えると、

体にとっては食事を摂らない時から食事を摂る状態までに

血糖値が上下している訳です。

体にとってはそのことが大きくダメージを受けていることになるのです。

その間、調整をしなければならないハードワークとなります。

体が元の状態に慣れるまでにインスリンを消費し、膵臓がいつもよりもハードな仕事、

重労働をさせられるのです。

膵臓の寿命を縮めている事になります。

 

ですから、内臓の疲労、血糖値の問題と二つを理解し、食事の回数を考えなければいけません。

内臓の疲労を考えるとなるべく休ませてあげたいけれど、

一日一食では血糖値の上がり下がりが危険です。

でも血糖値の事だけを考えて少量を何回も摂っていたら、内臓は一日働きっぱなしになってしまう。

(メディアでは一つの事だけに注目して、最近ではやたら血糖値ばかりが取り沙汰されていますが

体の事を考えるとすべての身体の機能を理解し、どうすれば一番いいか考える事が一番大事です)

内臓の疲労と血糖値の変位を考えると、一日3回の食事が理にかなっている言えるのです。

(もちろん適量で。)

なんだ、当たり前。と思われるかもしれませんが、理由を知らないと巷の情報に右往左往し、

訳の分からない金儲けビジネスに担がれて、変な健康法や間違った食事を始めてしまうのです。

しっかり体の事を理解し惑わされずに正しい食事をしてくださいね

 

そして、歴史の中で日本人は農耕民族だったので

自然環境の中で採れた作物を摂り生きてきました。

作物がとれなければ食べられない、死んでしまう。と言う飢饉を経験しています。

食べられないという事は「命の危機」という事がDNAに組み込まれているのです。

全力で防衛にあたります。(死ぬか生きるかですからそれはもう必死です)

つまり、少ない食事でも生きながらえるようにしてしまうのです。

そうしたベースが(過去の経験により生まれながらにして)私たちの身体の中にあることを忘れてはいけません。

 

ですから、むやみに食事を制限しすぎるダイエットや断食などしたら、

代謝の悪い状態になるスイッチを自らが入れてしまう事になるのです。

これは、「食べたら前よりも太りやすくなる」という事なのです。

この世の中から食べ物が少なくなってもうあまり食べられなくなって来たというのなら

正しい選択なのかもしれませんが、この飽食の時代に、そんな事をするのは逆効果であると言えるのです。

食べたい、でも我慢しなきゃ!という人がするのには全くの逆効果になるのです。

 

「食べたければ」むしろ適量を減らしてはいけないのです。「必ず」と付け加えて言ってもいい位です。

だからと言って、量があっていれば何を食べてもいいという事ではありません。

適量の中、体に必要なものを食べなければいけないので正しく選ぶ知識は必要になります。

では何を食べればいいの?という事になりますが、それはまた追々話していきます

今回は断食などせずにちゃんと食べる事の意味を理解してください。

 

それでも、断食をした人が「すごく体が軽くなった」とか「調子よくなった」

と言われる感想ですが・・

それまでの食生活があまりにも乱れていれば、内臓は疲弊していたことが考えられるので

それは断食をする事でその悪習慣から解放されただけであって、

それまでの食習慣に比べれば少し調子はよくなるでしょうと言うレベルです。

でも、あくまで緊急処置であって、上記のように体はダメージを受けている事を忘れないで下さい。

もし、悪い食事が習慣になってしまい、どうにもこうにも正せないという事で

ショック療法で、この先は必ず正しい食事をする為の第一段階というのなら一つの方法なのかもしれませんが

私はやはり、体の事を思えばしてほしくない方法であると思います。

あくまでショック療法であるので、2回、3回もするものではなく

上記の理由により内臓は疲弊する事が考えられるし

太りやすくなるのは容易に予測がつくので

もしもするのであれば、一回だけの非常手段として行うほうが体の為です。

(長い期間をかけ徐々に正しい食事に改善させることが体の反応からも一番よく、

食べ続けるという事を考えれば、体に負担がなく無理なく続けられるという事は大原則であり

急激にな事は避けるべきと想像はつくはずです。

死ぬまで食べ続けるのです。死ぬまでずっと内臓は働き続けてくれているのです。

あなたと共に。大事にしてあげて下さい。)

 

ですので、定期的に行うことは本当に怖い事だと思います。

定期的に断食をして体をリフレッシュ。

断食をしているから、その他の時は好きなものをなんでも食べてOK。

だなんて思ってやっていたら、健康とは真逆な事をしているとしか思えません。

一度体に入れたものを手軽にリセットできる、と考えるのなら、それは

体の事をあまりにも知らなすぎると言えます。

 

「一日一食ダイエット」にしても同じですが

それまでに無茶な食べ方をしていた人が、その食事を絶てば、

一時は体も軽くなり調子もよくなるでしょうが、

その状態を続ければ体は「栄養失調状態」です

頭はボーっとして、しゃべるスピードも遅くなり、活力もなくなり

顔色も悪くなり、肌もカサカサしてクリームが手放せないようになります。

集中力も低下し・・・つまりは老化している状態です。

自分がおばあちゃんになった姿を想像すればわかるかもしれませんね。

 

老化を早めるという事は寿命を縮めているという事です。

 

自分の身体にとってどのくらいの(食事の)量が必要であるかという事が分からなくなってしまいます。

脳は一旦飢餓感を覚えると食欲の「欲」の所が暴走し始じめます。

これを鎮めるには脳を正しく理解することから始めなくてはいけません。

これも生きる為に仕組まれたDNAによるものです。

これらが分かると、何が健康には必要で、何が危険な行為かが見えてきます。

ダイエットで(もちろん適量以上に食べてれば、減らすことは必要なのは当たり前ですが)

必要以上に制限し、脳に飢餓感を与えたダイエット方法を行った場合は

必ずと言ってリバウンドします。過激なトレーニングをした場合もそうです。

体が受け入れられない運動は続くはずありません。続けられなければ意味はないので

元に戻るのは当然です。

体は危機感を覚えるので、食糧(エネルギー)を確保しようとするのです。

当然のメカニズムで、正当な反応なのです。

「数か月で痩せる」というのは、企業側の宣伝に使いたいがための「ウリ」であって、

体の事を理解して、体を大切に思っていたらそんな方法はとりません。

そんな事をしなくても無理なく痩せることは可能です。

結果を急ぐ痩せたい側にも問題ありです。

短期間でお手軽な方法など無いのです。

ダイエットの話はまた別の機会に話しますね。

 

さて、ファスティングで、オートファジーの事もありますが・・・

(絶食することで古いたんぱく質の一部が分解され新たなたんぱく質を合成する材料にあてられるというもの)

ですが、このことを繰り返して問題はないのかは不明で明らかになってはいません。

ただこうしたことが起きましたよ。という発見であるにすぎません。

 

人の身体は本当に不思議で、素晴らしくよくできているので

こうした、危機的状況が起こった時に、何とかして生き延びようとします。

大発見なのはわかりますが、

でも、危機的状況なわけで、火事場のバカじから的なことが

人生の中で何度も生じていたら・・・どうなるのかは

まだ不明なわけです。

 

関節や筋肉であれば火事場のバカじからは体を壊します。

だから、普段は出せないようにガードが掛かっているのです。

(これもまた体の素晴らしい機能で)

体を守る為。では何故危険なその力が出せるように作られているのか、

それは、もしもの時に体を守る為。緊急事態の対処法です。

あなたは他の方法も考えずに、お手軽だからという理由で

火事場のバカじからを何度も使いますか?

 

何度も繰り返しても、

それでも安全という事が分かっていない事を

自分の大事な体で証明して見せますか?

「未知のどうなるか分からないよ、危ないかもね」

と名のつく実験を自らの体で試しているのです。

 

それでも試さなければならない程の理由がある時なら

選択するかもしれませんが・・・

そうであるのか、よく考えてみる方がよさそうです。

安全な方法は他にもあるのに・・・

替えのきかない大事な体、死ぬまでずっと働いてくれる体です。

 

健康を考え、痩せたいという事であるなら、

危機的状況をあえて生み出さなくても

まだまだ、できる事、やれることはあるはずです。

 

 

ファスティングの定義は体に必要な最低限のエネルギーを摂取。

と言っています。

私はそれはそのまま、「体に必要な物を食べる食事」を続ける事!が健康にとって大切な事であり、

何も無理して体に負担をかけてしまう断食をする必要はないと思うのです。

(もちろん食べ過ぎてもダメで食べなさ過ぎてもダメ。「適量」という事が大原則で。

それは運動量(仕事・スポーツなど含めその人が生きる為の活動)分と

体を維持する為に「必要な量」をしっかり食べる事という意味です。)

体の事を考えれば一週間で・・・とか、数日で・・・調整をするなんてありえないのです。

(数か月で痩せるという事も大きな間違いです。「ダイエットについてはまた改めて記しますね)

体の調整をするには2年という長い期間で体を慣らしていく事が最も最短で最適でベストな方法なのです。

それには体の負担だけでなく脳にも影響し

 

断食、ファスティングという流行りに乗り

酵素などを売りたがっている業者が参入し

食事をしないで栄養が手軽に摂れる酵素を飲んでください

と商品を売る言い訳にファスティングという言葉を

利用しているにすぎないように聞こえます。

 

ここに書いてあることも考えられたうえで

ご自身の健康にとって、一番いい方法をじっくり考えてみて下さい。

大事な体です、一度壊したら元に戻らないという事もあります。

色々な健康法が氾濫していますが、何でもうのみにせずに

よく考えて下さいね。

体のしくみを勉強する方が近道なように思います・・・

 

追記:断食を始めて頭がスッキリするのは

それまでの食生活であまり健康的なものを食べていない為に、

断食を始めたことで体から余計なものが排出されたからという事だけでなく

(個人的には2・3・日の断食で今迄の数十年分の物がスッキリと排泄されるとは考えずらいという事もありますが・・・その話はさておき)

脳の中で起こっている事に関して言うと、

オレキシン(神経伝達物質)が増えてしまい覚醒の状態を維持してしまう事からと言えます。

この「オレキシン」という脳内物質は、

睡眠、摂食だけでなく情動にも関与していると言われています。

ナルコレプシーという「眠り続けてしまう」珍しい病気を知っていますか?

この症状に、この「オレキシン」が関わっていることが最近の研究で分かってきました。

つまりオレキシンが何らかの原因で分泌できないか効かないようになってしまっているかして

覚醒できずに眠り続けてしまう。という事のようです。

 

摂食に関わるので

食べない事で、(ナルコレプシーの眠り続けるとは)逆にオレキシンの分泌が増え、

脳は覚醒状態を維持して頭がスッキリしてしまうというメカニズムです。

お腹がすくと眠れない、イライラするというのはうなずけますよね。

覚醒してスッキリするといいことのように勘違いしているようですが

体が異常事態を発し「お願いだから寝ている場合でなく、

今すぐにでもエネルギーや体に必要なものを食べてくれ」と

言っているようにしか考えられません。

体にとっていい状態とは言えず、つまり栄養不足なのです。

 

この状態が続けば眠れない、精神は不安定になる、体は不十分に作られない、

という理由から、免疫の低下、骨折、その他の病気も起こしやしやすくなる

とは考えられないでしょうか。

低栄養状態は危険です。(勘違いしないでね。➡もちろん食べすぎやバランスを崩すことも危険ですよ。)

 

体は数々の使っていない眠ったままの様々な機能を抱えています。

無理な極端な事をして、知らず知らずのうちに

むやみにそのスイッチを入れてしまう事はとても危険な事であると思えます。

しっかりと正しい知識を知りましょう!!