2009年9月22日。火曜日。

この日は56回目を数えるW大学馬術部との定期戦の日。吉岡はOB障害飛越競技に出場するべく早朝からG大の馬場にいた。


天候は雨上がりの晴れ。
実に6年半振りの試合である。


第1競技、現役学生の小障害飛越競技はホームG大の負け。
第2競技のOB障害飛越競技は何としてでも勝っておきたい。そして、OBの意地を見せたいという雰囲気がG大サポーターには広がっていた。


だがその雰囲気の為か、若しくは出番が1番だったからか、はたまた久しぶりの試合の為か、、、吉岡は物凄く緊張しプレッシャーを感じていた。
しかも、騎乗馬のスキャットカルチャーは、吉岡が現役時代から厩舎にいる唯一の馬で、当時は全日本学生障害飛越競技にも出ていたほどの馬。


全日本学生の障害の高さは最高で130cm。が、今回は最高でも100cm。
当然、満点で帰ってくるだろうという周りの雰囲気も、さらに彼にプレッシャーを与えたに違いなかった。

そのプレッシャーは、吉岡らしくない口数の少なさと硬い表情から、応援に来ていた宮本や鈴木、そして先輩の谷にも容易に伝わるほどだった。


だが、そんな彼のプレッシャーとは関係無しに下見の時間は訪れ、競技開始の時間も迫ってきた。


ジリリリリリ


準備運動の3分2飛越が終わり、何の感情も持ち合わせて無いスタートのベルが鳴る。


ゆったりとしたペースで走行を始め、1番障害、2番障害と無事に飛越していく吉岡とスキャットカルチャー。

『遅い。遅すぎるっ!』

先輩の1人がつぶやく。

4番障害。赤のオクサー。

『んんっ』

声にならない声を発したのは、1つ上の野川だ。

だが、7番障害までは無事にクリア。

残る障碍は、垂直の8番障害とダブルの9番障害のみ。

満点走行か!?

と、みなが思い、にわかにざわつき始めた瞬間。

8番障害の横木が落下。

『あぁっ!!』

こぼれ落ちる溜息と、W大サポーターの安堵の声。

結果は1落下で減点4。だが、スキャットに乗った相手校のOB選手が満点で帰ってきた為、吉岡の久しぶりの試合はとても残念な結果となってしまった。



続く

 

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等は関係ありません。
※当blogは吉岡大輔選手とオスカーリッツ号のオフィシャルサポーターです。