万博のシグネチャーパビリオンのひとつ、「EARTH MART」に行ってきました。まず目を引くのが、古民家風のかやぶき屋根。

 

入口では茅葺の材料の産地が紹介されていて、全国各地から集められた中に、大阪の淀川産の茅も含まれていたことにとても驚きました。地元の素材が使われていると思うと、ぐっと親しみがわいてきますね。ただ、出口で振り返ると茅葺屋根の存在が感じられず、「あれ?こんなだったっけ?」とちょっと戸惑う感じもありました。

 

 

 

  中に入ると、まずは映像鑑賞からスタート。

 

映像の内容は、私たち人間が「何かをいただいて生きている」ということ。誰かの命を受け取って、自分の命をつないでいる。そのシンプルだけど重みのあるテーマが、実写やグラフィックを組み合わせた静かで印象的な映像で描かれていたと思います。なお、上映中は撮影・録画は禁止です。

 

 

  スーパーのようでいて、命と向き合う空間

 

その後は展示ゾーンへ。最初に印象的だったのは、「あれ、納屋のようなにおいがするな」という感覚。おそらく、展示に使われている乾燥した植物の香りが広がっていたからだと思います。

 

 

展示エリアは「MART(市場)」という名前にふさわしく、スーパーのような空間。食品がどのように手元に届くか、人が何を食べて生きているのかが数値や模型などを使って可視化されていました。

 

 

食品の模型を専用の台に置くと、その背景が画面に映し出される仕掛けがユニークで、子どもたちが気に入っていました。特に印象に残ったのがハチミツ。ちょうど最近、ミツバチの巣を見学するイベントに行ったばかりだったので、「ああ、あの働き者のミツバチたちが運んできた恵みなんだな」としみじみ感じました。




 

 

 

  顔が動物に変わる!? インタラクティブな仕掛けも

 

途中、自分の顔が画面の中で動物や植物に変わる展示がありました。これは「あなたが食べた命が、あなた自身の一部になっていますよ」というメッセージのように感じられました。ちょっと不思議で、ちょっと切ない。

 

さらに進むと、日本の伝統食に関する展示もありました。お米や寿司、昔ながらの乾物やお菓子など、どれも親しみのあるものばかりで、見ていてほっとするような感覚がありました。新しい食べ物だけでなく、これまで大切にされてきた食文化を未来へつなげていこうというメッセージが伝わってきました。

 

 

 

  「万博漬け」の引換券

 

ここまでの展示を見終わったところで、「万博漬け」の引換券をいただきました。

 

 

 

 

これは「EARTH MART」で実際に漬けられた長期保存用の梅干しで、25年後の2050年に引き換えて食べることができる、いわば“食のタイムカプセル”。そのときまで元気でいられるかな…と思いつつも、Googleカレンダーの2050年1月に「万博梅干し」としっかりメモを登録しました。

 

 

 

  みんなで囲む食卓

 

展示の最後は、大きな円卓を囲むような部屋。いろんな人の写真が並び、まるで一緒に食事をしているような気分に。ここではなんだか胸がじんわりして、ちょっと感動してしまいました。

 

EARTH MARTは、食の未来を難しく語るのではなく、「私たちは何を食べて生きているのか」という根本の問いやさしく投げかけてくれる場所でした。未来食や技術の展示もありますが、どちらかというと、人や命の営みに寄り添う空間という印象でした。

 

 

実をいうと、このパビリオンには最初あまり関心を持っていませんでした。ただ、「25年後の梅干し引換券がもらえる」と聞いて、それなら行ってみようかなと軽い気持ちで予約。ところが実際に訪れてみると、想像以上に展示がよくできていて、考えさせられる場面や、胸が熱くなる瞬間もありました。やっぱり、自分の目で見て、体験してみないとわからないものですね。