さくらんぼ いつもの様に、花をたくさん付けたさくらんぼの木 今まで一度も 実をつけたことなんて無かったのに たった一粒だけ、大きな実をつけた 父は喜び、私にその大切な一粒をくれた 「お父さんが食べなよ…」って言ったのに 父は、私に食べろと言って聞かなかった どうしてあの時 爪楊枝の先ほどの小さなカケラになっても 父と一緒に食べなかったんだろう それが最後だと 知っていたのに それ以来 一度もさくらんぼは実をつけず 白い大きな花ばかり たくさん咲かせている その白い花を見るたびに あの日を思い出して 泣いている私 -画像の花は河津桜です-