柚雪は稲坂の家で稲坂の帰りを待ってたが
「……やっぱり、ね…」
稲坂からの連絡が来て『輝春、今日帰れなさそうだから、自分の家に帰ってもいい』と…いうものだった。
「……あいつばっかりだな」
柚雪は少し不満そうにつぶやいた。
「もう終わりにしよかな…元々人を愛せる自信なんてなかったし」
柚雪は言いながら、ベッドに携帯を投げ、床に腰を下ろした。
「……もうやだなこれ。複雑」
笑いながら天井を見上げた
「……」
自分自身について考えていた。柚雪は、最近複雑な感情を抱えていた。柚雪は、自分自身が何をしたいのか、何を望んでいるのか理解できなかった。
ーーー翌日ーーー
ちゅんちゅん…と小鳥の鳴き声が聞こえて窓の方に向いて
「結局、稲坂さん…帰ってこなかったな…」
柚雪はそう呟いた
「あれから連絡こないし…」
柚雪は寂しさを感じながら、片手に持った酒を飲み干した。
ーーー数時間後ーーー
ガチャっと玄関のドアを開ける音がする
「…え、輝春まだ…帰ってなかったのか…」
稲坂は柚雪の靴をみてそう呟いて部屋に入る
「あ…やっと帰ってきた…」
柚雪は部屋に入ってきた稲坂の方をみてそう言った
「輝春…それ…いったい」
部屋に入った稲坂は、床には、空の酒の缶が転がっていて驚きの表情を浮かべた
「…あ〜、あんたの帰りを待ってる間が暇で…つい…」
柚雪は笑いながら立ち上がって足元がふらつく
「輝春…大丈夫かい?」
稲坂は足元がふらついた柚雪を支えて心配そうにそう言った
「離して…稲坂さん」
柚雪はそう言いながら稲坂を軽く突き飛ばす
「……輝春?どうした…?」
あまりにも突然の出来事に稲坂は混乱した表情する
「…ねえ、稲坂さん…」
そんな中、柚雪が稲坂に話しかけた。
「ん?どうしたんだい?」
「もう終わりにしない…?俺ら」
柚雪は切なそうにそう言った
「…え、どういうことだい?」
稲坂は驚きの表情を浮かべながら、そう答えると
「…もういいんじゃない?……もう、別れよ?稲坂さん」
柚雪は無理に笑いながら言う
「…そんな、なんで…」
稲坂さんは驚きと同時に、柚雪に縋りつくように
問いかけた。
「…分かってるくせに…。玲哉の方が似合うよ。ごめんね。こんな時間まで家に居座ってて。それじゃ、バイバイ」
そう言って柚雪は稲坂から離れて家から出ようとした
「ちょっと…まって!輝春…っ!」
稲坂は家から出ようとした柚雪の手を掴んだ
「…なんですか…?」
そう言いながら柚雪は振り向いた
「…なんで、別れるんだい…?」
稲坂は柚雪を見つめる悲しみに満ちた瞳があった。
「…もう、好きじゃないんですよ…稲坂さんのこと」
柚雪は稲坂に冷たくそう答えた
「…え、もう好きじゃない…?でも俺は…っ!」
稲坂は柚雪に向かって叫んだ
「もう離してください…っ!元々俺は…稲坂さんなんか…っ」
そう言いかけたが稲坂がはなしを遮って柚雪の手を引っ張って抱きつく
「…なら、輝春」
「…なに、して…っ!」
と柚雪は驚きを隠せなかった
「嫌いなら突き飛ばして?輝春」
稲坂は柚雪を強く抱きしめていた
「……っ。だから!…嫌い…って言ってるんじゃないですか…っ!」
柚雪は「嫌い」の所を喉に詰まらせながらそう言って突き飛ばす
「……っ。そうか…ごめんな?輝春…」
突き飛ばされた稲坂は柚雪を見ながらそう言った
「……」
柚雪は何も言わず、ただ稲坂を見つめていた。
「…帰っていいぞ…?輝春」
立ち上がってニコッと笑ってあっさりと別れを受け入れた稲坂
「……っ」
柚雪は言葉に詰まり、何も言えなくなってこの場から出てしまう
「………もうこれでいいんだ…これで…」
見えないところで涙を流しながら自分の家とへ帰る
ーーーside稲坂ーーー
「輝春が…別れを切り出すなんて、本当に思いもよらなかった…」
稲坂は深いため息をつきながら、悲しそうに呟いた。
「…どっか行こう…」
稲坂は絶望的な気持ちに襲われ、輝春との思い出を思い出しながら外に出た。
「………」
どこに行くかも決めず、ただただ稲坂は歩き続けた。稲坂の心は、柚雪との別れによって傷ついていた
「……ん?あれは…稲坂さん…?」
絶望的な表情を浮かべた稲坂を遠いところから愛美が見つけた。
「……」
稲坂は練習所の前で足を止めて見上げる
「…何してんだろ…」
「もういいか…」
稲坂は練習所を見上げながらそう呟いた
「……?」
愛美は黙って稲坂を見つめてた
「はぁ……」
ため息つきながら練習所の中に入ってった
「…練習でもやるのかな…」
と愛美は稲坂の跡を追ってたがレッスン室に行かず屋上に行こうとした
「……」
「…ちょっと待って!い、稲坂さん…」
愛美は踊り場のところで稲坂を呼び止めた
「……あ、愛美か…なんだい…?」
稲坂は振り向いて無表情で愛美を見つめる
「……いや…大丈夫?」
愛美は稲坂の顔色を見て心配そうに言った。
「……」
稲坂は愛美に何も言わず、ただ黙って立ち尽くしていた。
「…話、聞くよ?」
愛美は彼の様子がおかしいと感じ、優しくそう言った
「あはは。大丈夫大丈夫、屋上で風を当てに行くだけだよ」
稲坂は苦笑しながら答えた。
「……分かった。じゃあ、俺帰るね」
愛美は稲坂の言葉に少し不安を感じながらも、稲坂を信じてそのままにしておいた。
「……ん」
屋上に着いた稲坂は柵にもたれかかる
「…俺、振られたんだな……」
彼は悲しそうな表情で、心の中で落ち込んでいた。
「……ごめんな、輝春」
と言って柵を越えて飛び降りた