「ねぇねぇ柊翔の聖誕祭見に行こ〜?稲坂さん」
柊翔が知らないところで玲哉は稲坂を誘った
「え?あぁ。いいよ、行こっか」
そう言ってニコッと笑う稲坂
「ほんま?ありがとな!稲坂さん」
「…で?この前、練習後の1人で〝いつも〟のところに行ってた、でしょ?」
稲坂は真っ直ぐな目で玲哉を見つめる
「……なんでそれを…?」
玲哉は驚いたように尋ねた。
「まぁ、飯かえりに見に行ったら…玲哉がいたから」
「…あは、見られてたんか」
玲哉はそう言いながら自分の頬をポリポリと掻く
「あの時、様子がおかしかったからね…」
「稲坂さんにはバレるよな…」
玲哉は他メンバーに心配させないようにしてたつもりだったが、稲坂だけは玲哉の本当の気持ちを見抜いていた
「おじさんには分かるんだよ、玲哉くん」
稲坂は優しく言った。
「……稲坂さん…」
玲哉は泣きそうになってた
「こらこら…玲哉、泣かないの」
そう言って稲坂は玲哉を抱きつく
「ちょっと…稲坂さん…何やっとんの…っ!」
玲哉は驚きながらも、稲坂の腕に包まれる。
「俺、言ってたでしょ?無理になる前に話してって」
抱きしめながら稲坂はニコッと笑う
「だめやて…こんなこと…柚雪に見られたら…俺死ぬ」
玲哉はそう言って稲坂を引き離そうとした
「だめだよ。玲哉。無理はしないでっていってるんだろう?」
そう言って阻止をする稲坂
「稲坂さん…だめやて…」
「大丈夫だよ。玲哉は何も心配しないで?」
「……っ」
「辛いよな…片思いしてるのって…」
そう言いながら稲坂は玲哉の背中をさする
「うん…辛い…でも諦められないんだよね…」
と玲哉はつぶやいた
ーーー柊翔の聖誕祭後ーーー
「楽しかったな…楽屋は…ここや」
そう言った後に玲哉は柊翔の楽屋に入ろうとしたが
「……はぁ、俺、出番は無しか」
2人が話してるのを聞いて入るの辞める
(何やってんのやろ…せっかく…)
玲哉はため息をつきながら、離れた場所に立っていた。すると楽屋から柊翔と葵唯我出てきた
「…うん、幸せでええ!」
すると後ろから足音がしてきた
「玲哉、どうした?柊翔のところに行くんだろう?」
そう言った稲坂が立ってた
「…あ、稲坂さん…えっと、柊翔おらんかった」
玲哉は振り向いてそう言いながら無理に笑う
「そうなのか…残念」
「まぁ、帰ろうよ。稲坂さん」
そう言いながら稲坂の腕を引っ張る
「あっ…ちょっ…玲哉…!」
稲坂は腕を引っ張られて駐車場に連れられる
「はい、ヘルメット」
そう言ってヘルメットを投げる
「…あ、うん」
稲坂の前に投げられたヘルメットを、稲坂は受け取った
「ほら、乗って?稲坂さん」
そう言いながら玲哉はバイクに跨って、稲坂に手招きした
「乗るよ」
稲坂は戸惑っていたが、玲哉に誘われるままにバイクに乗り込んだ
「ほな、出発〜」
玲哉は声をかけ、バイクは走り出した。
(玲哉…なんか嫌なことあったんだな…)
風を切って駆け抜けるバイクの上で、稲坂は心の中でそう呟いた
「なぁ、玲哉…?楽屋でなんかあった?」
「………」
稲坂がそう声掛けても玲哉には聞こえなかった
ーーー街並みのいい場所にてーーー
「はい、稲坂さん、着いたで」
そう言ってバイクを止めてヘルメットを外す
「やっぱりここなんだな…」
稲坂はそう言いながらヘルメットを外した
「…ごめんね、ちょっと付き合ってくれへん?」
頬をポリポリと掻きながら笑った
「やっぱりなんかあったんでしょ?」
「大丈夫やて!な?稲坂さんは心配しすぎんやて」
そう言いながら柵に背中をかけた
「そう?でも…おじさんは心配なんだよ」
そう言った後に玲哉の前に立つ
「大丈夫やよ、僕は大丈夫やから」
玲哉はニコッと笑いながら安心させるように言った
「玲哉…」
稲坂は心配そうに玲哉の手を握った
「ん?どうしたん?」
「ほんとに…大丈夫?無理にしてないか?」
稲坂は真っ直ぐな目で見つめる
「……」
玲哉は思わず黙り込んだ
「ほら、無理にしてるんだろう?玲哉」
稲坂はそう言って首を傾げた
「…なら、慰めてくれるん?」
「…え?あ、そばに居るだけなら…いいが」
稲坂は戸惑いながら答えた。
「ちゃう。体で慰めてよ…」
玲哉はそう言った後、バッと稲坂に抱きつく
「玲哉、どうして…」
稲坂は戸惑いながらも冷静に接する
「あんた、もう分かるんやろ…?」
玲哉は涙声で言った
「わかるよ?けど、それとこれは違うよ」
稲坂はそう言いながら玲哉の背中に手を回してさする
「ねぇ…稲坂さん…今日一緒に…いてくれへん…?」
玲哉は稲坂の服をぎゅっと握った
「なんでいつも俺なん?」
稲坂は笑いながら玲哉にそう言った
「こんな姿、稲坂さんしか分からへんもん…だめ?」
と玲哉は、少し恥ずかしそうに答えた。
「分かったよ。じゃあ、今日は一緒にいようか」
と稲坂さんはクスッと笑い玲哉にそう言った。
「ほんま?ええの?」
「こんな状態で玲哉をひとりにするのはおじさん不安です」
稲坂はそう言いながら玲哉を見つめた
「稲坂さん…ありがとね」
「さあ、寒くなってきたし、帰ろ?玲哉」
そう言って玲哉の手を引っ張りバイクのとこまで行ってバイクで玲哉の家まで帰った