とある休みの日…
「ふぅ…今日休みでやることねぇなぁ」
柚雪は街中でブラブラと歩いてた、そこで
「……え」
柚雪が目にした光景は、稲坂と玲哉が楽しそうに買い物をしている姿であった。その瞬間、柚雪の心には驚きと不安が込み上げた。
「…な、え?うそ…でしょ?」
普段、稲坂と玲哉が一緒に買い物をしているところを見たことはなかった。何かの間違いかと柚雪は不安な気持ちを抱えたまま、その場を離れた
「…いや、普段から仲がいいことは…知ってる。けど…あそこまで仲がいいの…知らなかった」
不安げな柚雪の口から漏れた
「…なんだろ、この気持ち…」
この感情が何なのか、どうしてこうも複雑なのか、自分でも理解できなかった。
「…誰かに話したい…この気持ち…」
口にすると、柚雪は抱えているもやもやした感情が一層膨らんだ
「…でも、誰に話したら…」
立ち尽くしてた所に誰かに後ろから声をかけられた
「あれ…?柚雪じゃん、そこで立ち尽くしてどうしたの?」
後ろに振り向くとそこには愛美が立ってた
「…あ、あいみん…いや…なんも無い…。大丈夫だよ!」
無理に笑ってみせた、だが
「いや、なんかあったんでしょ?」
愛美は柚雪を見つめた
「……あいみんに関係ない話だよ」
愛美の視線から外しながらそう言った
「でも…俺ら仲間でしょ?話なら聞くよ?」
愛美は柚雪の手を取り優しく微笑んだ。
「はぁ…わかった。ここじゃ、目立つから喫茶店に行こか…」
柚雪は愛美にそう提案した
「そうだね、行こか」
そう言って2人は喫茶店に向かって喫茶店に到着すると、柚雪と愛美はゆっくりと席に座った。
「何か飲みますか?」
店員が聞くと、愛美はアイドル笑顔で注文する。
「カフェラテをお願いします。柚雪もカフェラテでいいか?」
「…あ、うん、それでいいよ」
「じゃあ2つお願いします♡」
「分かりました…///」
店員が注文を受けると、柚雪は落ち込んだ表情で話し始めた。
「……さっき、稲坂さんと玲哉が楽しそうに買い物してる所、見たんだけど…」
「うん、それで?」
「…やっぱり、あの2人付き合ってんのかなって…」
柚雪は顔を下に向けながら話す
「うーん…、確かにこの前の練習の日、2人で来てたしなぁ」
そう言いながら愛美はちょっとした意地悪なことを考えた
「…そうだよね…」
「付き合ってんじゃねぇ?あの2人」
(この前のお返ししてやろ~)
「……」
柚雪はそれを聞いてなんも言葉が出てこなくなってしまった
「…2人のあの感じならそうじゃないかなぁ?」
愛美はそう言いながらテーブルに肘をついて、手首を軽く曲げ、手の平を顎に添えた。
「……」
柚雪は黙り込んでた
「で、その事で落ち込んでたの?柚雪」
「……多分、自分でも分からない」
柚雪はじっと愛美の目を見つめる
「…ふーん。じゃあ、柚雪は稲坂さんのことどう思ってるの?」
愛美は手の平を顎に添えたままそう言った
「…え、稲坂さんの…どう思ってる…?」
柚雪は愛美の言ったことに混乱する
「うん、そう。稲坂さんのことどう思ってんのって」
愛美はそう言いながら見つめる
「…分からないって…でも、アイツらが付き合ってるってことに複雑な気持ち…というか…モヤモヤした感じ…」
柚雪は小さくそう言った
「モヤモヤ?なんで?」
そう言った後、愛美は首を傾げた
「それがわかんないって言ってんじゃんか…逆に教えてよ…この気持ちをさ!」
柚雪はキレ気味で愛美にそう言った
「…もしかしてさ…それさ…お前、稲坂さんのことが好きって事じゃねぇの?」
愛美はニヤニヤしながら柚雪の頬を引っ張りそう言った
「……っ」
「だから、モヤモヤしてアイツらが付き合ってるの知って落ち込んでたんじゃねぇの?ちがう?柚雪」
愛美は柚雪の頬を引っ張りながらそう言った
「……わ、かんない。」
柚雪は小さく首を横に振る
「俺が好きじゃないのか?輝春。」
愛美は意地悪な顔をして得意な声真似をする
「…その声辞めて、あいみん」
柚雪は愛美の手をベシッと叩く
「痛いな、輝春は俺の事…嫌いか?」
それでも愛美は声真似を続ける
「……やめて、ほんとに!あいみん」
「じゃあ、自分の気持ち、もう分かってるんでしょ?」
「………」
柚雪は黙り込んでしまう
「黙らないでよ。好きなんでしょ?稲坂さんのこと」
今度は愛美の声は戻して柚雪に話し続ける
「………」
愛美の言葉に、柚雪はどう答えたらいいのかわからなくなってしまった。柚雪の口からは、まるで言葉が出てこなかった。
「どうなの?柚雪」
愛美はまた手の平を顎に添えてそう言った
「………かもしれない」
柚雪は下に向いて小さく呟いた
「なんだって?」
「いつの間にか…好きになってるかもしれない…」
柚雪は渋々、愛美の顔を見ながらそう言った
「で、柚雪はどうしたい訳?そのままでいいの?」
「……。」
また柚雪は黙り込んでしまった、が…愛美が
「はぁ…。もういいや。あんたがそのままでいることを望むならいい。俺はなんも言わない。それでいい?」
「……え」
そう言われた柚雪は驚きを隠せなかった
「んじゃ、あとは勝手にして」
そう言いながら立ち上がって去ろうとする
「ちょ…あいみん。待って」
柚雪は愛美の腕を掴む
「なに?…人の事を弄んだあんたが悪いよ、輝春くん?」
愛美はそう言った後に柚雪の手を振り払って
「……っ」
それに対して柚雪はなんも言えなかった
「…後は一人で考えろ。じゃ。」
愛美はニコッと笑って手をひらひらしながら去る