「ああ…我が子たちはもう大丈夫だろう」
と呟きながら、玲哉は散歩中だった。
「いうて、俺は叶わない恋してるけどな」
歩きながら小声でそう呟いた
(だって…ねぇ?俺が好きなのは…柊翔やもんでも柊翔には葵唯がいるから)
「自分の気持ちを抑えてるんよな…悲しすぎる恋やなぁ」
すると…
「あれ、玲ちゃんじゃん!」
向かいから柊翔と葵唯が現れた
「おー!柊翔と葵唯やん!……あ、もしかして…?」
玲哉はそう言いながら口元に手を当てた
「デートだよ。ね?柊翔」
と言いながら葵唯が柊翔の方を見る
「あまり…言わないで…恥ずかしいんだから」
と、恥ずかしそうに柊翔は小声で囁いた。
「え!デートだって?すごいね!楽しんできてね!」
と、玲哉は無理に葵唯に笑いながら言葉を発した。
「当たり前じゃん。玲ちゃん」
「……せやね!」
「玲哉、またね!」
柊翔は笑顔で玲哉にそう言った
「おん!またな!」
玲哉は手を振りながら葵唯達を見送った。ふたりが見えなくなると
「……はぁ…」
玲哉は深いため息をついた。
「いいな…あの二人…羨ましすぎる」
玲哉はあの二人の関係を見て、羨望の念を抱いていた
「どうしよかな…やることない」
再び歩き始める
(…誰か暇してる人おらんかな)
と考えながら周りには人々が行き交い、街は賑わっていたが、玲哉は心の中で静かな孤独を感じていた
「……泣きたいわ…」
「薄塚。」
と声をかけたのは、稲坂さんだった。玲哉は驚いたように顔を上げ、稲坂さんを見つめる
「あ、稲坂さん…」
「……」
稲坂は黙って見つめながら何かに察す
「ん?どうしたの?稲坂さん」
玲哉は黙ってた稲坂の肩を叩いてそう言った
「薄塚、辛いだろう?」
稲坂はいきなり玲哉にそう言った
「…ふぇ?」
いきなり稲坂にそう言われてポカーンとした
「…ちょっときて玲哉」
「…えっ、ちょ…稲坂さん…っ」
言いながら稲坂は玲哉の手を引っ張って近くの公園に連れていく
「ここに座って?」
公園のベンチに手を叩き、稲坂は玲哉に座るよう促した。
「……わかった」
と言って玲哉は公園のベンチに座る
「なんかあった?薄塚」
稲坂は首を傾げる
「え?なんで?」
玲哉はそう言って誤魔化した
「いや、なんか顔色が悪いような気がしたからさ」
と稲坂は心配そうに言った。
「そうなん、でも大丈夫やで!」
玲哉は稲坂にニコッと笑う
「そうかい…」
稲坂はまだ不安そうに眉を寄せた。
「強いて言うなら…そやね…、公演うまくいけるかなってことやね」
「あー、大丈夫だろう。俺たちなら!」
「そうやね」
稲坂が心配そうに見上げる中、玲哉は空を見上げた。
「……玲哉」
と稲坂がまた心配そうに声をかける。
しかし、玲哉は自然に涙がこぼれるほど感極まっていた。
「あっ…なんも無い!大丈夫やから」
と、玲哉は強がりながらも涙を拭いた。
「やっぱりなんかあるんだろう?」
「…っ、俺やっぱりつらい…辛くて苦しい」
玲哉はもう我慢限界が一気に来てそう言った
「……玲哉。大丈夫だよ。」
そう言いながら優しく抱き寄せる
「こんな…こんな思いするなんて思わんかった…っ」
「うん」
「もうしんどい…」
玲哉は稲坂の服を握りながら泣き続ける
「うん、そうだよね…。つらいよな」
稲坂は優しく言葉をしながらそっと背中を撫でる
「この恋は、叶わないことを知ってんねんけど、やっぱり…」
と玲哉は弱々しく口にした
「だよね。薄塚は瀬良のこと好きだもんな」
稲坂は玲哉の背中を撫でながらそう言った
「やっぱり、知ってたの…?」
「まぁな、何年一緒に過ごしてると思ってんの?」
「そうやね…」
しばらく沈黙が流れる
稲坂は背中をさするのをやめ、玲哉を見つめながら、ゆっくりと口を開いた。
「 もう大丈夫になったのかい?」
と尋ねる稲坂の声には、やや心配がにじみ出ていた。
「…ごめんね、稲坂さん…。」
「ううん大丈夫」
稲坂はそう言いながら玲哉の顔を撫でた
「しばらく休むことにする」
そして、玲哉は深いため息をつきながらとそう言った。その言葉には、彼の疲れと心身の痛みが滲み出ていた。
「でも…もう少し頑張ったら?薄塚」
「これでも頑張ってんねんで?これ以上に何を頑張るの…?」
「んー…わかった、みんなには話すよ。」
「ん。ありがと。稲坂さん」
「今日は帰りな?」
そう言って立ち上がってニコッと笑う
「……」
玲哉は稲坂の言葉に小さく頷いた
「じゃあ、送るよ」
「……」
「ん?どうしたの?」
「ううん、大丈夫」
と言って立ち上がって歩き始めて、続いて稲坂も歩き始める
「…もう諦めるしかないのか…」
と、歩きながら玲哉は小さく呟いた。
「……。」
稲坂は、その言葉に何も言葉を返せなかった。
ーーー玲哉の家の外にてーーー
「送ってもらっちゃって…」
と玲哉が口を開くと、稲坂は優しく微笑みながら、頭を軽く撫でた。そして、
「ううん、良いんだよ。きっちりと休んでね、薄塚」
と稲坂は優しい言葉をかけた
「…稲坂さん…」
「ほらほら、早く」
「…稲坂さん…ありがと」
玲哉は家の中に足を踏み入れながら、振り返ってそう言った。
「うん。大丈夫だよ。心配しないで」
稲垣は落ち着いた声でそう言いながらニコッと笑う
「……ん」
「とりあえずしばらく休んで。なんかあったら必ず連絡すること!分かったね?薄塚」
「うん」
「それじゃあね、薄塚」
稲坂がそう言って玲哉はドアを閉めた
「大丈夫かな…?薄塚…」
稲坂はそう呟きながら、自宅へと帰路に着いた。
ーーー翌日(練習所にて)ーーー
「あれ、薄塚居ないじゃん」
「そうだね。真面目な玲哉なのに」
「連絡する?」
「あ、そういえば昨日、連絡が来てたんだった」
と稲坂は焦りながらそう言ったあと
「本当?体調でも悪いのかな?」
と柊翔が心配そうに尋ねた。
「まあまあ…昨日、電話で声が元気じゃなかったよ、薄塚」
「え?そうなの?どうしたんだろ…。珍しい」
「まぁ、とりあえず今日は8人で練習しよーや」
悪い空気にならないようにそう言ったのは響葉だった
「そう…だね。公演近づいてるし、みんなやろ〜」
そう言ってみんなは真剣にレッスンに取り組んでいった。
ーーー練習後ーーー
「「「「「「「「お疲れ様した〜」」」」」」」」
レッスンが終わったメンバーたちが声を揃えて言った。
「あーもぅ…体が動かな〜い」
「愛美、お疲れだな。てか、毎回じゃね?それ言うの」
「いーじゃん。ほんとに動かんもん…」
「ねぇねぇ、みんなでご飯行かない?」
「おー、いいね!行こ行こ!」
メンバーたちの声に、稲坂は微笑みながら同意してご飯に行ったのだった。
食事を楽しんでいる最中でも、稲坂の頭は玲哉のことが気になって仕方なかった
ーーー数日後(練習所の前にて)ーーー
「…今日も、やめとこ…。」
レッスンに行こうとした玲哉だが、柊翔と葵唯に顔合わせるのも鬱になってやめてしまった
「……コンビニに行って久しぶりに酒買お〜っと」
そう言って玲哉はバイクでコンビニに向かった
(なんで…俺は好きになったんやろ…。虚しいなだけやのに…)
コンビニに着いた玲哉は酒を大量購入して街並みのいい場所に向かって
街並みのいい場所に着いた玲哉は
「あーぁ…今日も行けんかった……。あかんな…俺。副リーダーやのに」
ブツブツとつぶやいてさっきコンビニで買った酒を飲み始めた
「なんで…なんで俺ばっかり…こんな思いせなあかんの…?」
そう言ってどんどん玲哉は酒に頼るようになって行った
「もう…もぅどうでもええ…どうでも…全部」
そう言いながら玲哉は酔った勢いでバイクで柊翔の家に向かった