ランチクローズ1分前。
特にすることもなく、いつクローズサインをだしたろか、と、こっそり時計とにらめっこ。
そろそろ、と店の入り口に向かおうとすると、突然鳴り出した、電話。
いやな予感がする。
この時間にかかってくる客からの電話は、あまりいいことがない。
例えば、
今、そっちへ向かってるんだ。あと2分で着くから待っててくれないかな。
さっと食べてすぐ帰るし、いいでしょ、ね?
この言葉を信じて待っていたら、やってきたのは20分後。ゆっくりふつうにマイペースで、たっぷり時間をかけて食べて帰りやがった。
とか、
テイクアウトだから、頼めないかな?うん、もう閉店時間なのは知ってるよ。でも、なんちゃってロールたった2本なんだ。5分で出来るだろ?すぐ取りにいくからさ。
この言葉を信じて待っていたら、現れたのはスシが出来上がってから30分は経っていた。
いつも、そんな調子のいいこと言っちゃって、どーせまたウソなんだろ、と思いつつ、心のなかでは、
そんなのムリムリ、ぜーったいにムリ!(゙ `-´)/
と叫んでいるのに、ついだまされてしまうのは、なぜだろう…。
電話は鳴りつづけている。
できれば出たくない。私が出ればまた同じことだ。誰か出てくれないか。できれば運命はほかの人間に決めてもらいたい。そうすれば、あきらめもつくし、八つ当たりも出来る。
電話はまだ鳴っている。
あきらめの悪いヤツだ。といっても、客からと決まったわけではない。と、意を決して受話器をとった。
もしもし、なんちゃってスシレストランです。(;^_^A
あの、ちょっと聞きたいんだけど、ディナーのクローズは何時かな?
客からだ。若い男性客のようだ。でも、すべりこみ来店やテイクアウトオーダーのお願いではないらしい。
はい、9時30分です。(;^_^A
ヘイ、カモーーーン!(^o^;)
今日は開いてるか、とか、開店時間の確認とか、よく、こういう電話がある。いつもどおり、機械的に伝えたのだが、なんだ、この反応は。なにが、カモーーーーン!なのか、ワケがわかんない。今後の展開が不安になってきた。
本日のディナーの閉店時間は9時30分ですが…。なにか。(;^_^A
YOU KNOW WHY ?
何故だか知らない、なぜかは知らないが、このフレーズのあとには、めんどくさい頼みごとがくることが多い。
特に、若い、もしくは若ぶった男性客がよく使う。
ついでだから言わせてもらうが、若い女性客の使う、ACTUALLYというのも、ときどきイラっとする。
本来は、とか、実際には、という意味だと学校で習ったが、女性客が、
アークチュアリーー…、
と語尾をおもいっきり上げて伸ばすときは、あとに、でっかいお願い事が続くか、または、でっかいお願い事をしたあとの言い訳が続くという、中途半端な逆接の接続詞として、使われることが多い。日本語で言えば、
っていうかあ…、
みたいな感じか。
You know why って、知らねーよ、なんなんだよ。と、突っ込みを入れたくなったが、入れなくても、敵は畳み掛けてくる。
あのさ、今日は遅い時間に食事をしなきゃならないんだよ。だから、今日だけ特別に11時まで開けてくれないかな。たった一日だけ、今日だけだよ。出来るでしょ。(*^ー^)ノ
できるわけねーだろ、そんなこと。なんでアンタの食事時間に合わせて店開けなきゃならないんだよ。
大の大人の頼みとは思えない。クリスマスの子供だって、もっと控えめな要求をする。
いやあ、ちょっとそれは無理かと思いますが。(;^_^A
アンタ1人で1000ドルも使ってくれればね考えないこともないけどね、ウヒヒ。と、薄ら笑いを浮かべつつ、今日こそは絶対に断るべきだと、心に決めた。
アンタはマネージャー?それともオーナー? アンタが決めることじゃないだろ。ちゃんとボスに尋ねたのか?゛(`ヘ´#)
できない、と言えば逆ギレ。このあたりは、子供とかわらない。 こんな要求が通ると思ってるのが不思議なくらいだ。┐( ̄ヘ ̄)┌
しかたなく、ボスに相談。するとボス、
おおいいぞ! 1人で3000ドルくらい使ってくれるならな。うははは。ヽ(゚◇゚ )ノ
このボス、私の上をいっている…。(゚ー゚;
やっぱりムリのようです…。(;^_^A
3000ドルのことは言わず、断ろうと思ったがなかなかあきらめない。
結局、テイクアウトのオーダーをして閉店時間ギリギリにピックアップする、ということでカタがついたが、
ちゃんと、時間どおりに来るんだろうな…。
どんなヤローか見届けたかったが、残念なことに、この日私はランチのみ。
まだボスからの報告は受けていない。いや、ボスが無言であることが何かを物語っているような気もするが、怖くて聞けない。