【読書記録】197冊目「木内昇 茗荷谷の猫」
江戸から昭和にかけて9つの物語が紡がれています。
それぞれの物語が繋がってないように見えて、繋がっている。
ひそやかな繋がりといいましょうか・・・
そのひそやかな繋がりが読み進めていくうちに、はっきりとした
繋がりを持っているんだと気がついた時にハッとさせられました。
どの短編も味わい深いのですが、私が1番心に残ったのは
『庄助さん』です。
とぼけた味わいのある庄助さんが真直ぐに夢に突き進むのかと
思ったら、待ち受けているのは戦争。
自分とは全く関係のない所で、自分の想いとは全く関係なく
戦争に動員されてしまう。
拒否は許されない。
断固として取り込まれてしまう。
戦争に行くことになってしまい、ばたばたと日々を過ごし
勤めていた映画館に挨拶に来た時の言葉の数々に泣けた・・・・
自分で夢を諦める辛さより、強引に取り上げられる辛さの方が
100万倍辛い。
それでも庄吉さんは、生きて帰り映画監督になるという夢を
諦めない。
庄吉さんのような人がいったい何人いたんだろうと思うと
泣ける・・・これを書いていても泣けます・・・
心に染み入る短編集です。
折に触れ読み返したいです。