それは 「娘が風俗(デリヘル)に就職し働きたいといっていてどうしたらいいのか・・・」
というお父様からの相談でした。
お父様・・・40代、サラリーマンと推測
娘さん・・・高校卒業間近の18歳。一人娘。
補導、非行などで警察のお世話になったことはないが
何度も家出をしている。
確かに、こんな話を突然されたら親はビックリするでしょう。
親子は何度も衝突していました。
お父様からの生活態度の注意から始まり言い争いに発展し
その度に娘さんは家出をし何日も帰って来ないを繰り返していました。
そして、数か月後に卒業を控えたこのタイミングで
「風俗(デリヘル)に就職する」 という報告だというのです。
お父様は今まで以上に激怒し娘さんを叱りつけたそうです。
ただ、娘さんはまた家出をして今までの家出期間を更新中だそうでラインは既読無視、電話も出なくなっていて警察に家出人として捜索願いを出したものの事件性は薄いとの判断で積極的に動かず・・・と仰ってました。
警察が積極的に動かないのには訳があって娘さんは友達の家を転々としている事を親が把握しているので動かないのです。
娘を連れ戻し、デリヘル就職を諦めさせたい父親・・・
私はこの父親としか話が出来ない状態・・・
さて、この父親と直接会えない娘さんとどう向き合うか・・・
お父様のお話を聞いていくと、お父様の話の癖が出てきます。
カウンセラーと話をする時はどこか弱々しいく感じるほど丁寧なのに娘さんと話した時の事になると「俺は分かってる、知っている、お前よりも長く生きているんだから」 という具体性のない自信が顔を出し 「言ってやった」 「教えてやった」 感が溢れている
どうやら娘さんには支配的な話し方と接し方だったようです
私 「今回の話をどのように聞かれましたか」
父親 「聞くも何も『そんなことしたら人生が終わるぞ』と言いまし
たよ」
私 「娘さんはどのように聞いて、話していましたか」
父親 「いやもう話になんかなりませんよ」
「そこからは怒って出て行ってしまいましたからね」
私 「じゃ娘さんと何も話してないって事ですね」
「話を聞いて否定だけしたって事ですね」
父親 「ええそうです」
私 「話を聞いて就職を考え直す方向に持っていく事も
出来たと思うのですがなぜ聞かなかったんですか」
父親 「・・・・・・そうですね・・・焦ったのかもしれません・・・」
「いう事をきかなくて・・・それでデリヘルなんて・・・」
「やめさせる事しかなかったので・・・大声で怒鳴りまし
た・・・」
私 「なぜやめさせようと思ったのですか」
父親 「なぜって、若い娘がやるようなしごとじゃないでしょう。
娘の将来の為です。なんでちゃんとした会社を選んで
就職しないんだって親なら思うでしょう」
私 「性に携わる仕事をしている若い子は沢山いますけど」
「若くなかったらよかったとお思いですか」
「親御さん皆がそう思うという根拠はおありですか」
父親 「あ・・・いや・・・だってね・・・性を売るなんて・・・」
私 「先ほど『ちゃんとした会社』と仰いましたが、
もし娘さんが選んだお店が、法律に則っとって届け出も、
税金も、保険もきちんとやっていたらそれは社会的にも
『きちんとした会社』ではないですか」
父親 「それはそうですが・・・親として止めて欲しいんですよ」
私 「それ、娘さんに言いました
お父様が心配なさるのも分かります。
しかし踏み込まなければいけないところを避けている
ように私には感じられますが、どうですか」
「踏み込むって叱るとか、恐れさせるとか、注意するとか
ではなく『踏み込んだ話し合い』って事ですけど」
父親 「正直、どう扱っていいのか分からないので・・・
話しているつもりでアドバイスになって・・・
言う事をきかないので・・・注意になって・・・
いつの間にか怒りになって・・・
そうですね・・・話しではないですね・・・」
私 「今『正直、どう扱っていいのか分からない』って
おっしゃいましたよね それ、そのまま娘さんに
言ってみるといいと思いますよ
お父さんは不安、お父さんは寂しい、
お父さんは悲しい、お父さんは怒ってる・・・。
そのまま伝えればいいんです。
でも出来なかった・・・。なぜでしょう」
父親 「ちゃんとして欲しいって思ってるだけ
なんですけどね・・・」
私 「ん~その、ちゃんとってどういう事なんでしょう」
父親 「普通ですよ、普通。ごく普通。
普通に就職するとか進学するとか・・・」
私 「就職する、進学する、結婚して家庭を持って
子供をもって・・・その間に家を購入して
それは普通なんですか
それで幸せになるんでしょうか」
父親 「いや・・・どうかは分かりませんけど・・・
不幸にはならないんじゃないかと・・・思いますけど」
私 「じゃ離婚したら不幸」
父親 「いや・・・でも・・・」
私 「その論法で行くと私は不幸な家の子と言う事になり
ますが親が離婚しているので。でも、私は不幸で
もないし離婚をしていないあなたの相談を受けてい
ます。どう思います」
父親 「いや…私がただそう思っただけで・・・すいませ
ん・・・」
私 「あ~気を使わなくていいですよ。気にしていません
から、それより今 『私がそう思っただけ』 って仰い
ましたよねそれって『自分はそう思うけど他の人は
違う』 って事ですか
父親 「そうです」
私 「自分と自分以外とは考え方が違うと分かっている
のに娘さんにはそうではないのはなぜでしょう」
「娘さんにではなくご自分に何か不都合な事はあり
ませんか」
長い沈黙の後
父親 「私達にも世間体があるので・・・困るんです」
私 「はじめは娘さんの為と仰ってましたが・・・」
父親 「はい・・・いや・・・はぁ・・・そうですね」
私 「娘さんはそういうところにイラっと来てるんじゃないで
すか貴女の為と言いながら本当は自分達の世間
体の為。自分たちが傷つかないように娘さんに罪悪
感を持たせながらコントロールしようとしていると感じ
ているんじゃないですかね」
父親 「あ・・・・そう・・・・ですね・・・・かも・・・しれません」
私 「娘さんともう一度話し合う事です。腹を割って・・・。
娘さんはもしかしたら本当に覚悟して言っているか
もしれません。その時の覚悟もした上で娘さんと向
き合う事です。」
父親 「逃げていたのは・・・
私達だったかも知れませんね・・・
体裁を気にするあまり・・・
娘は狡いって思ったのかな・・・私達の事」
私 「それも娘さんに聞く事ですよ」
結局この親子は話し合う事で合意し娘さんの風俗への就職は先送りとなったとの事。
娘さんの親への警戒心は当分続くでしょうし、お父様は直ぐに怒鳴りつけて言う事を聞かせようとするタイプの方のようなので,
先ずは怒らず根気よく対話を続けて欲しいとお伝えして終了となりました。
このお話が誰かの幸せのヒントになれば幸いです
※個人情報保護の観点から少し内容を変えております。