手、脚、頭、胴体と体内の各臓器
体の怪我や不調は頭で考えても治りません。
心の不調も同じこと。
心の傷も考えても治るものではありません。
私たちの「生」は肉体と魂により成り立っています。
肉体だけでも、魂だけでもこの「生」は成り立ちません。
どちらも同じように傷つくし、そして癒えるものなのです。
心に傷を負った際、苦しみから逃れたい一心で、一気に解決する「答え」を探し求め、そして思考のトラップにはまることがあります。
精神的な問題が「思考」で解決すると思いがちで、本を読み漁ったり、宗教に救いを求めることがありますが、癒しのプロセスは肉体の怪我や不調と同様に時間を要するものなのです。
つまり、心の傷を癒す「解決策」はなく、
それを癒すのは「時間」のみなのです。
心を楽にする「考え方」がありますが、これは絆創膏や包帯、添木やギプスなどに値すると言えるでしょう。
傷を覆い、更なる痛みから心を守るもの。
癒しのプロセスをスムーズにし、
完治した際、心に歪みが出ないよう補修するもの。
指を切った際、傷はどのように癒えるでしょう。
まずは止血。
血が止まっても痛みはなくなりません。
やがてカサブタができ、乾燥し、はがれ、ようやく完治し、痛みがなくなります。
このプロセスに近道はありません。
無理にカサブタを剥がせばまた血が流れます。
大きな怪我であれば、その分完治に長い時間を要するでしょうし、何らかの後遺症が残る場合もあります。
「心の痛み」も肉体の怪我と同様。
流れる涙が止まっても痛みはなくなりません。
無理に刺激をすればまた涙が流れます。
「痛み」は癒しの最初のプロセス。
痛みを起こし、そこに傷を認識し、必要な癒しのプロセスを起こすのです。
薬をつけても、絆創膏を貼ってもできた傷が消えないように、心の傷も「教え」によってすぐに消え去るものではありません。
それは、時間をかけて毎日少しずつ癒えてゆくものなのです。
瞬時に治ったとすれば、それは「奇跡」と言えます。
体の傷が瞬時に消えることが「奇跡」であるように…。
「奇跡」は起こり得ますが、そこには「奇跡」を起こすに足るなんらかの理由があります。
大切な人を失ったあなたの心は今、深く傷ついているに違いありません。
その苦しみから、痛みからすぐにでも解放されたいと切望していることでしょう。
あなたが今必要としているのは、心の傷を癒す「解決策」ではありません。
その傷を優しく「保護する何か」なのです。
それは家族や友人かもしれません。
あるいは、ふと手に取った一冊の本、youtube動画、教会や寺院を訪れること、旅先での人との出会いであることもあるでしょう。
無理に傷と向き合う必要はありません。
あなたの直感が、あなたの心を守るものへと導いてくれています。
今は涙が止まらなくても、いつかは止まる時が来ます。
傷口から流れる血が止まるように…。
体の傷が時間をかけて癒えるように、
心の傷も、あなたが何もせずとも、毎日自然に癒えています。
いつか痛みは重さに、そして傷から完全に解放さる時がやってきます。
その傷により自身を罰することをしさえしなければ…。