もう、なくしたと思っていた。


大切だったのに、届かなくなったもの。

心から願ったのに、手放さざるをえなかったもの。


それらは、もうどこにもないと思っていたけれど

ふと気づくと、まったく違うかたちで、

そばにいてくれていたことがある。


誰かの言葉の端に。

窓辺の光のなかに。

理由もなく安心できる時間の中に。


あのとき願ったものは、そのままでは叶わなかったけれど、

でも、命はちゃんと、別の形で答えてくれていたのかもしれない。


なくしたものは、本当はどこにも行っていなかった。

形を変えて、ずっと、そばにいてくれた。