中丸美さんがお書きになった、井口基成先生の評伝が出版されました。




20年以上かけた大著ですが、一気に読んでしまいました。


私は大学時代に基成先生の弟子、木村潤二先生に師事していたので、まあ、孫弟子といえば孫弟子。


中学高校時代に師事していた久保春代先生は舘野泉先生の弟子だから、舘野先生の師匠だった安川加寿子先生からすると、ひ孫弟子? 


井口vs安川の対決の話は青柳いづみこ先生の本にも出てきますが、私自身が両方のルーツを持っています。


ハイフィンガーを広めた悪者のようにも言われる基成先生ですが、当時のベストを彼なりに尽くしていたスケールの大きな人物であることがわかります。ドイツ音楽以上にフランス音楽に傾倒していたことも再確認。


ただ、メカニズムに関する記述は、私からするとものたりない。私も30年ぐらい、メカニズムについて研究して文献はかなり見ましたけど、いま、根津栄子先生に習って、やっと「こうすればいいんだ」とわかりつつあります。自分で弾かない著者がこの問題を書くのは限界があり、読んでもやはり結局、壁を超えられていないなと感じました。


驚いたのは、秋子先生との離婚などスキャンダラスなところをかなり書いていること、、、井口先生のそうしたプライベートな部分も、歴史として必要だという判断で書かれたのだろうし、いろいろな細かい謎がスッキリわかった部分もありました。


ブラームスとクララの手紙もいまは出版したり翻訳したりされていますけど、公人は、没後ある程度経過するとプライバシーってないのですよね。



春秋社の井口版は、たくさん持っています。学生時代に使っていました。歴史的な価値はありますが、私は生徒たちに新しく買わせることはないし、自分がいまから譜読みするならいま一番良さそうな楽譜を新しく買います。評伝を読んで、井口先生自身もご自分の楽譜の限界には触れていました。


しかしあの時代にあれだけ膨大な楽譜を校訂したエネルギーには驚きます。生きるか死ぬかという命がけの気迫でレッスンしていたことも。


井口先生の膨大なお仕事があり、日本のピアノ教育は近代化したことが、まざまざと描きだされています。


分厚い本なのでKindleで買いました。スマホで読めるので隙間時間や移動中に読めて助かりました。


スマホアプリでAmazonを開くとKindle本が買えないのですが、シェアボタンで開き直すと購入できます。