真っ白な三日月が夜空を照らし 灯りのいらぬ闇夜の夜
チリーン
チリーン
と鈴の音がする
村人は 少し戸を開き音が通り過ぎるのを見ていた
チリーン
チリーン
童子の腰についた鈴が揺れて響き鳴るが 小さな音は村人の耳に心地よく届く
赤い着物を着て 童子が少し開いた戸口を嬉しそうにして瞳をキョロキョロしては見ていた
その後ろを 赤い袴に白い着物 肩からは狼の頭のついた毛皮がぶら下がるというより姫鬼の肩に乗っかっている
狼の瞳は 力強く生きているかの様に見える
ある戸口に差し掛かると 童子が止まり姫鬼を見た
姫鬼は戸口前に立ち
「入って構いませぬか」
と尋ねた
中から年老いた老人が 黙って戸を開けて
「どうぞ」
と招き入れた
白く濁った目をした老人は
「こちらがあなた様の骨を砕き入れた刀と血を染めあげた柄でございます」
と差し出した
波打つ波紋の刀と真っ赤な柄に施された飾り
姫鬼は
「わちの望みの物を作って頂きありがたい 翁には世話になった」
と姫鬼は紅い爪で老人の左目を挿し抜いた
左目は涙を流すように血が流れて止まる
老人の白く濁った瞳はなくなり澄んだ水のようになり視界が戻っていた
姫鬼と童子の姿はなく 声だけが老人の耳に残った
「礼を申し上げる」
老人は その後数本の刀を造り最後の一本を造り終えて息を絶えた
亡骸の老人の左目は 真っ黒な煤の色で何も写さなかったと言う
「母さま その刀をなんとするや」
鶫が問うた
「もののけを断ち切る事も 人を断ち切る事も出来る そして わちも断ち切る事が出来る わちの骨と血を喰うて出来た刀じゃ」
そう答えて微笑んだ
町では 百鬼夜行のもののけ達を退治すると武士が出ていた
だが 刀でもののけ達を切れず陰陽師がもののけ達を退治する世の中だった