西加奈子さんはかなり好きな作家さんで、単行本文庫本合わせて10冊以上、本棚にあります。

私より年下で、関西人で、エジプトなどでの海外経験もあり、共通点はあまりないです。

でも、子どもの頃の気持ちを表現するのがとても上手で、読んでいて共感することが多いです。

 

『円卓』のこっこや、『漁港の肉子ちゃん』のきくりんや、『ふくわらい』の定さんが好き。

子どもって、そんなに無邪気でも呑気でもないよね、というのをよく分かっている作家さんです。

乳癌治療を公表されていますが、どうかこれからもお元気で、素敵な作品を発表し続けてほしいと思います。

 

娘さんへ推薦する一冊は『きりこについて』

 

 

【あらすじ】

優しいパパママの一人っ子として、可愛がられているきりこ。容姿に恵まれなかったが、想像力があり優しく、自分はとても可愛いと信じて幸せな小学生時代を送っていた。

ある日、体育館の裏で、人間の言葉を理解する賢い黒猫“ラムセス2世”を拾う。

11歳の頃、きりこが想いを寄せていたこうた君がきりこを「ぶす」と言う。それをきっかけに、同級生たちもきりこに対して「ぶす」という対応を取り始める。昨日までのきりこと中身は変わらないのに。きりこは学校に行かず、夜しか出歩かないようになる。

ある日、きりこは誰かの泣き声を聞き、猫を従えて外に出る。泣いていたのは、容姿に恵まれているゆえに「男性から搾取された」と感じているちせちゃん。

のちにAV女優からAV制作者になるちせちゃん、若気の至りで前科を負ったこうた君、黒猫のラムセス2世とともに、きりこは自分とは何か、世界とは何かを追求していく。

 

【関連】

「きりこはぶすである。」という衝撃的な一文で、本作は始まります。

「吾輩は猫である。」のリズムだったと、最後まで読んで気がつきました。

漱石先生はあの時代に、”猫の一人称”というとんでもない文体で小説を書いたのだなぁ。話自体はあんまりおもしろくもないのだけど。

猫がしゃべる作品はけっこうあるけど、『吾輩』以前にもあったのかしら?

妖犬・八房はしゃべったな犬


この小説はルッキズムとかフェミニズムについて、説教臭くなく描かれています。

若い頃は自分の外見にコンプレックスを持つことは多いです。でも人間にとっての美人とか「ぶす」とかは、猫視点ではどうでもよくて…

きっとそのための猫一人称なんですね。


ファンタジーだけどリアルで、深く考えさせられる、中学生女子にぜひ読んで欲しい一冊です。