或るマリオネットの御話 | 戯言+~プラス~

或るマリオネットの御話

そのマリオネットはいつも独りでした。

それはそれは長い間、誰もいない小屋の窓際に腰掛けていました。

窓から見える風景が、マリオネットの全てでした。



或るとき、マリオネットは窓越しから、綺麗な女の人が通り掛るのを見ました。

それはこの国のお姫様です。

マリオネットはお姫様に恋をしました。

それから、マリオネットは窓際でお姫様を探すことが日課となりました。

雨の日も。

風の日も。

いつ通るかも分からないお姫様をただずっと探し続けました。

雪の深いある日。マリオネットは、お城で舞踏会があることを耳にします。

マリオネットは、神様にお願いしました。

この体中を縛る糸を解いて、自分の足で歩きたいと。

翌朝、マリオネットの側には、今まで体を縛り付けていた糸がありました。

手も。

足も。

全て自分の思い通りに動きます。

マリオネットは、雪の降る中、お城を目指して歩き出しました。

まだ慣れない足取りで。

頭の雪を払うことも知らずに。

ただ歩き続けました。

やがてマリオネットは、お城へ着きました。

しかし、もう既に舞踏会は終わり、そこには誰もいませんでした。

あの綺麗なお姫様も。

マリオネットは夢見てました。

お姫様と一緒に踊ることを。

マリオネットは、小屋に戻り、窓際に座った後、また自分の体に糸を巻きつけました。



そのマリオネットはいつも独りでした。

それはそれは長い間、誰もいない小屋の窓際に腰掛けていました。

窓から見える風景が、マリオネットの全てでした。