ハマナスゆらり わたしもゆらり
1・2・3・4 ベストなシーズン
1・2・3・4 見切りのシーズン
坂を上って 坂を下って
風に歌って 北の岬へ
あなたも塗れて 本いた場所へ
西選手は100メートル走の選手である。その西選手にはある秘密があった。それは
「その気になれば、通常の3倍のスピードを出すことができる。ような、気がする」
ということであった。だから、自分がその気になればオリンピック出場・金メダル獲得も夢ではないような気がしていた。
実際、西選手はオリンピック出場・メダル獲得の夢を追いかけてみようかと思ったこともあった。しかし元来、目立つことが苦手な西選手はどうしても夢を追いかけることに躊躇した。
「認めたくないものだな、照れ屋故の過ちというものを」
と、西選手は自分に言い聞かせるのであった。しかし
「夢を追いかけないのなら、どうする?」
西選手は思い悩んだ。
「どうか、私を導いてくれ」
祈るような気持ちで、自らの新しい道を探し求める西選手であった。
そんな苦悩する日々を送る西選手が、買い物をしていた時のこと。まもなく閉店ということで、店内に「蛍の光」が流れてきた時、まさにその時
(夢を見るのが、新しい道じゃないでしょ)
という声が、ふいに西選手の脳裏に響いてきた。
赤いキャップ帽を被った西選手は、新しい道に思い馳せながら家路に着いた。
(見える、見えるぞ! 私にも見えるぞ!)
西日で真っ赤に染まる菜の花畑のあぜ道を、通常のスピードよりゆっくりとしたテンポで歩きながら、そよ風に吹かれる西選手であった。
覚めた心地の西選手であった。