ほたるの瞬き | ひ ふ みわか

ひ ふ みわか

ちょっとした歌とお話

 

ハマナスゆらり わたしもゆらり

 

(ワン)(ツー)(スリー)(しゃー) ベストなシーズン

(ワン)(ツー)(スリー)(しゃー) 見切りのシーズン

 

坂を上って 坂を下って

風に歌って 北の岬へ

あなたも(まみ)れて (もと)いた場所へ

 

 

 

 

 

西(しゃー)選手は100メートル走の選手である。その西(しゃー)選手にはある秘密があった。それは

「その気になれば、通常の3倍のスピードを出すことができる。ような、気がする」

 ということであった。だから、自分がその気になればオリンピック出場・金メダル獲得も夢ではないような気がしていた。

 

実際、西(しゃー)選手はオリンピック出場・メダル獲得の夢を追いかけてみようかと思ったこともあった。しかし元来、目立つことが苦手な西(しゃー)選手はどうしても夢を追いかけることに躊躇した。

「認めたくないものだな、照れ屋(ゆえ)の過ちというものを」

 と、西(しゃー)選手は自分に言い聞かせるのであった。しかし

「夢を追いかけないのなら、どうする?」

 西(しゃー)選手は思い悩んだ。

「どうか、私を導いてくれ」

 祈るような気持ちで、自らの新しい(ニュー)(ロード)を探し求める西(しゃー)選手であった。

 

 そんな苦悩する日々を送る西(しゃー)選手が、買い物をしていた時のこと。まもなく閉店ということで、店内に「蛍の光」が流れてきた時、まさにその時

(夢を見るのが、新しい(ニュー)(ロード)じゃないでしょ)

 という声が、ふいに西(しゃー)選手の脳裏に響いてきた。

 

赤いキャップ帽を被った西(しゃー)選手は、新しい(ニュー)(ロード)に思い馳せながら家路に着いた。

(見える、見えるぞ! 私にも見えるぞ!)

西日で真っ赤に染まる菜の花畑のあぜ道を、通常のスピードよりゆっくりとしたテンポで歩きながら、そよ風に吹かれる西(しゃー)選手であった。

 

覚めた心地の西(しゃー)選手であった。