君たちが知っておくべきこと-未来のエリートとの対話- 佐藤優
兵庫県の有名な進学校である灘高校の生徒たちから寄せられた質問に、著者が答える形で講義が進む。
授業というよりはゼミのような形だったとか。
灘高校というのはすごくて、偏差値では上位0.1%に入るそうだ。
内容はとても興味深い。こんな本に、高校生の頃に出会いたかったと思った。
私はこんなすごい進学校の生徒ではなかったけど、学ぶことは多かっただろうと思う。
もちろん、大人になってから読んでも学びはある。
著者の外務省時代の話やエリート論、人生の先輩としてのアドバイス等が印象に残った。
その他
・ヨーロッパ的な学問というのはごく大雑把に言って、ユダヤ・キリスト教の一神教の伝統と、ギリシャの古典哲学のえ伝統とローマ教皇の伝統、その三つが合わさってできたものです。
・(略)ロシア語では「イエズス会」っていうとペテン師とか嘘つきという意味になったんだ。
・偏差値が高いとは(中略)ボリュームゾーンから外れているということだ。
・(略)心得ておいてほしいんだけど、ボリュームゾーンであるところの大衆を完全に敵に回した場合、エリートは敗れます。
・あと皆さんに重要なことは、やっぱり頭のいい人が書いたものを読むことです。(浅田彰「構造と力」等、何冊か例が出される)
巻末に「それでも日本人は「戦争」を選んだ」の加藤陽子教授と著者の対談が収められている。
「オシント(オープン・ソース・インテリジェンス:一般に公開された情報をもとに多様な情報を組み合わせて分析すること)」だけで、「ヒューミント(ヒューマン・インテリジェンス:人が直接観察、判断したり、人との接触で得られる情報全般)」は無くても物事を理解出来ると言って欲しい、という生徒の話はとても良く分かる。
それに対する著者の答えは説得力があり、更に加藤教授の指摘やそれに答えて著者の思いが語られる。
本書の内容を加藤教授が鋭く突っ込んでいて、とても面白い対談だった。
以前にこの「それでも日本人は~」も偶然読んでいたのだけれど、こちらは加藤教授が神奈川の栄光学園という進学校の生徒たちに講義をした本。
栄光学園は、神奈川県のとても偏差値の高い進学校だそうだ。
国家の罠 佐藤優
著者の本はこれまで何冊か読んだけれど、まだ最初の本(だと思う)である本書を読んでいなかったので読んでみた。
ぎっしりと字が詰まっているので、ページ数以上にボリュームを感じる本だった。
文章はとても読みやすい。
外交官の仕事振りや、外務省内部の問題、国策捜査の怖さなどがよく伝わってきた。
自身の逮捕がなぜ発生したか、国のレベルにまで及ぶ分析は読みごたえがあった。
学びの多い本だった。
以下、印象に残った点(意訳なのでひょっとしたらニュアンスの違うところがあるかも)
・ロシア人は原理原則を譲らない外国人を尊敬する
・利害が激しく対立するときに相手とソフトに話ができる人物は手強い
・日本人の実質識字率は5%だから、新聞は影響力を持たない。
・私が鈴木氏を裏切れば、ロシア人は今後、日本人外交官がどのような政治家をキーパーソンだと紹介しても信用しない。
・私が最期まで鈴木氏と一緒に沈めば、ロシア人は日本人外交官がこの政治家は信用できると言って紹介しても裏切られることはないと信用してくれる。
・これがロシア人の常識なのだ。
・ロシアはユーラシア国家で、西に向けた顔と東がある。
欧米のロシア専門家は、ロシアの東に向けた顔に関心がない。
・ロシアは欧州でもアジアでもない。
・ロシア人は酒の席でいつも人相見をする。
・旧ソ連時代から生き残っている政治家は例外なく酒が強い。
・外交官や特殊情報の参考書として弁護団に「スパイのためのハンドブック」ウォルフガング・ロッツ(他2冊)を推薦した。
※この本は昔、エンタメとして楽しく読んだことがあったので、こうした場で真面目な難しそうな本と一緒に出てきたのは意外だった。とても懐かしかった。
・政治家(を逮捕すること)に対するハードルは昔と比べて低くなっている。
・鈴木宗男氏は、日本がケインズ型の公平分配の論理からハイエク型の傾斜配分の論理への転換を実施する中で排除された。
・日本は「国際協調的愛国主義」から「排外主義的ナショナリズム」へ転換しつつある。
・ナショナリズムにはいくつかの非合理的要因がある。
「自国・自民族の受けた痛みは強く感じ、逆に与えた痛みはあまり強く感じず、すぐに忘れる」
「より過激な主張がより正しい」
・できることと好きなことは違う