理由 宮部みゆき

第120回(1998年下半期)直木三十五賞受賞。

高級マンションの一室で一家全員が殺害された。

しかし、殺された一家は本当の家族ではなかった。

ドキュメンタリー的な手法で、謎が徐々に明かされていく。


巻末の解説で、著者は「NHK特集をやりたかった」と語っていたのだと書かれていた。

斬新な書き方で面白い。

私が他に知らないだけかもしれないけど。

関係者が出てくる度に、人となりや家族のこと等が簡単に語られるんだけど、どのキャラもリアリティがあって引き込まれる。




マリオネットの罠 赤川次郎

フランス留学から帰国した上田修一は、恩師の紹介で広大な敷地に洋館を構える峯岸家に住み込みでフランス語の家庭教師に行く。

ある日修一は洋館の地下に幽閉されている峯岸家の3女・雅子と出会い逃亡の手助けをするのだった…。


再読。初めて読んだのは高校生の頃。

当時はかなり印象的で、今でも結構覚えていた。

以前読んだ記事で“赤川次郎の最高傑作”と書かれていた。

宣伝だったかもしれないけど。笑

確かに良い作品だと思う。

面白いだけでなく、とても心に残る作品だった。

結末はちょっと残念だったけど。

意外性はあったが、こういうどんでん返しは求めてなかった。

再読してもやっぱり感想は同じだった。笑




キケン 有川浩

某県某市にあるごく一般的な工科系大学、成南電気工科大学の機械制御研究部、通称「機研(キケン)」。

部長・上野、副部長・大神を中心に様々な騒動を繰り広げる。

理系ってこともあって、主要人物は皆男子。

大学時代を思い出すような話だった。




告白 湊かなえ

幼い娘を殺された教師、森口悠子の復讐。

悠子の他に犯人の生徒とその家族、クラスメイト等それぞれの「告白」を通して犯行の動機や背景が明らかになる。

以前に映画を観て、教師役の松たか子が静かな迫力で印象に残っていた。

人の醜い部分や気持ち悪い感情も描かれていて、興味深いというか容赦ないというか。笑

(後で知ったが「イヤミス=読後、イヤな気持ちになるミステリー」と言うらしい)

救いのない話だけど、読後感は悪くなかった。

巻末に中島哲也監督のインタビューが掲載されている。こちらも良かった。




秘密 東野圭吾

1985年の冬。自動車部品メーカーで働く杉田平介39歳の妻・直子36歳と娘・藻奈美11歳が乗車していたスキーバスが雪道で転落事故を起こし、妻の直子は亡くなってしまう。

しかし、生き残った娘の藻奈美が目覚めた時、その身体には妻の意識が宿っていた。

平介は、娘の姿をした妻と暮らしていく。

途中はちょっと気持ち悪かったり、居心地が悪かったり。

読み進む内に、平介はもう夫の意識を捨てて父親に徹するしかなく、直子も平介の妻であることは忘れてこれからは藻奈美として生きていくしかないだろうと思える。

そのお陰で、結末は納得感があった。藻奈美の結婚式は感動的。

これはもちろん、そう思わせるようにエピソードが書き連ねてあるわけで、やっぱり東野圭吾はうまいなあと思った。