第19回本屋大賞受賞作。
第11回アガサ・クリスティー賞受賞作。

本屋大賞の受賞作は毎年面白い。本作も良かった。

ただ、本屋で平積みされてる候補作を見ながら、本書のタイトルはとても陳腐だと感じていた。
なので、本作が受賞するとは思わなかった。

「六人の嘘つきな大学生」だと予想していた。
読んでないけど、こちらの方が面白そうだったから。笑

「同志少女よ、敵を撃て」というタイトルから内容がある程度想像できるので、こういう話が好きな人はたぶん手に取るだろう。

この陳腐なタイトルは固定ファンを狙ったのかもしれない。

“同志”“少女”“敵を撃て”とあるように、本書は第二次世界大戦でナチスドイツに故郷の村を焼かれたソビエト連邦の少女が狙撃兵になる話。

ウクライナ人の女性も主要キャラで登場する。
彼女の口からロシアとの歴史も語られている。
この辺り、タイムリーな作品だと思った。

他にも、“女性”兵士であることを始め、戦場の狂気とか、ファシズムなど、戦争がテーマなだけに重いところもある。

しかし、それは一部。
エンタメ作品らしく、話はサクサク進んで読みやすい。

本作はデビュー作だそうだけど、そうは思えないくらい構成も文章もしっかりしてる。

初期の作品って危なっかしい部分があったりするけど、本作にはほとんど無いので安心して楽しめる。

ストーリーも新鮮で面白く、入り込めた。

恥ずかしながら、独ソ戦の小説なんてこれまで読んだことがなかった。
あえて言えば「戦争は女の顔をしていない」のマンガ版を読んだぐらい。
あれは元々、小説ではないそうだけど。

こういうジャンルを好む人が本書を読んだらどんな評価をするのか、ちょっと興味がある。

不満がひとつ。
最後の方でセラフィマ(主人公)が捕虜になるシーンは白けた。

ここまではフィクションながら強引な展開もそれほど無く、リアリティが感じられて良かったのに。

イェーガー(敵)と会話させて、尚且つ殺さない(ここでは殺さずに後で対決する)為の苦しい展開か。

良く出来てると思って読んでいただけに、ここは残念だった。

とは言え、不満はそれぐらいでとても面白い本だった。

最後に「アガサ・クリスティー賞」の選評が付いていた。
こういうおまけは嬉しい。