うちのベランダにハトが留った。
鳥が留ったことなど記憶にないので、
びっくりしてこちらの動きも止まった。
止まったついでに気配も消して
ハトの様子を観察した。
なるほどこのような模様があるのか、
首回りは意外とぬめっとした感じだな、
などなど考えながら見ていた。
ハトは頭をわたしの右手の方向に向けている。
ということはハトの目はこちら向いており、
しっかりとこちらのことも見られている。
気配を消したつもりだったが、
簡単に気づかれていた。
あ、見られているなと思ったあたりから
なんだかハトがそわそわとしはじめて、
とうとう我慢できなくなったように、飛んだ。
そのときに、あっと思った。
ハトはまず跳んだ。
そして翼を広げて羽ばたいたのである。
羽ばたきながら跳んだのではなかった。
考えてみると、
羽ばたきながらでは飛べないのかもしれない。
「よう見とけよ」と
あの目が言っていたような気さえするほど、
すごいことを教えられた気がしている。
ハトは、跳んでから羽ばたいたのである。