東京にわざわざ何をしにいったのかというと、
絵を描きに行ったのである。
絵の講座に出たから
習いに行ったと言ってもいいが、
先生はほとんどなにも教えてくれなかったので、
やはり描きに行ったというのが正しいと思う。
絵なんかうちで描けばいいと思うけれど、
これがなかなか描けないのである。
近年はコンピューターを使うことに慣れてしまったこともあり、
自分の手で色を塗ることが
すっかり怖くなってしまった。
コンピューターだとじつにきれいに塗れて、
自分が描いたものと思えない出来映えとなるから、
これは下駄を履かせてもらっていたようなものだった。
その代償として
自分の真の実力を直視できなくなるのだから、
デジタルにはけっして魂を売ってはいけない、と思う。
2日間で4つのテーマに沿った作品を描いた。
そのときにわかったのは、
じつはわたしは手描きが怖かったのではなかった、
ということである。
4つのうち3つの作品は筆を使わずに手で描いていた。
手に直接画材をつけて紙に塗りたくった。
つまり、怖かったのは筆だった。