なくてよかった | 群衆コラム

群衆コラム

耳目を惹きつけて止まない話題の数々。
僭越ながらお届けいたします。

わたしが中学、高校生だったころ、

当然ネットなどというものはなかった。

コンピュータだって、

一部のマニアックなひとが使うもので、

白いアルファベットでなんだかわからないものが

黒い画面に書かれており、

どう見ても便利なものには見えなかった。



そもそもコンピュータが

どこに売っているのかさえわからなかった

まさか電気屋さんで

テレビやエアコンといっしょに売られる日が来ようとは。

そんなに長く生きてはいないけれど、隔世の感がある。



いまにして思うのだが、

中学、高校のときにネットがなくて本当によかった。

ネットがあったら、たぶん

勉強どころではなかっただろう。

世の中には7、8時間、

ずっと集中して勉強していられるひとがいるらしいが、

わたしはそんなことができるひとではなかった。

いまでもできない。

もって1時間。



集中がきれると、うちのなかを歩く。

やることは二つある。

一つは冷蔵庫を開けること。

もう一つはテレビをつけること。

テレビは両親のマークが厳しかったので、

冷蔵庫を開けることのほうが多かったと思う。

それでなにをするでもないのだが、

気が済むとまた机に向かう。



いまはそんなに勉強することもないが、

集中して作業しなければならないときがある。

でも集中できない。

そんなとき手を出すのがネットである。



いまうちにはテレビがないし、

冷蔵庫も電源が入ってないので、

開けてもおもしろくない。

そういうことがあるにしても、

ネットの吸引力は絶大で、

絶好の逃避場所になっている。



こんなものが中学、高校のときにあったら、

それは大変だっただろう。

いまの子たちは、

そのあたりうまくやっているのだろうか。

わたしにはいまの中高生はとても務まりそうにない。