ミラは20代半ば頃までは

日本酒は「オッサンが飲むお酒」と思って敬遠していた。

その観念を変えてくれたのは「十四代」との出会いでした。


20代のある日、

友人のご家族が

「お酒好き?そしたらこのお酒持って帰り〜。

美味しいから飲んでみ?」

と一升瓶を2本、私にお土産に持たせてくれた。


そのうちの1本が山形の「十四代」だった。


それがどんなに手に入りにくい貴重なお酒かと

その方は一切語らず、アッサリと

「これ、美味しいから飲んでみ〜」と未開封の一升瓶を丸ごとプレゼントしてくださったのだ。


ありがたくいただき、車に積んで持ち帰り…


あろうことか私は、その十四代の一升瓶を

自宅の駐車場で

ツルっと手が滑り

落として割ってしまったのだ!!


うわ…どうしよう!

一滴も飲めないまま割ってしまった!!


「せっかくいただいたのに、駐車場で割ってしまったなんて申し訳なくて相手に言えない!

同じ十四代ってお酒を自分で買って飲んでみて

(割ってしまったことはナイショにしといて)

後日、お礼と感想を言おう」

と考えた。


…甘い考えだった。

大阪の、アチコチの酒屋さんに行き

「すいません、十四代ってお酒、ありますか?」

と聞いて回るも、どこの酒屋にも全く置いてない。


そのうち、十四代ってお酒は

滅多に手に入らないお酒で、

もし手に入る酒屋さんでも数量がとても少なくて

初来店の者がいきなり買いに行って

売ってもらえるようなお酒ではないと言うことがわかってきた。


考えが甘かった私は

「ならば山形県まで行けば、さすがに手に入るだろう」と、

軽自動車で夏休みに大阪から山形まで行ってみたが

それでも手に入らず

駐車場で割ってしまった自分のミスのデカさや

そのお酒を私にくれた人のお気持ちを

改めて思い知ることになるのだ…(T_T)


とうとう私は友人に

「実はあのお酒を割ってしまった。同じお酒を探しまくってるけどどうしても手に入らない…割ってしまって本当にごめん!」

と打ち明けた。


友人はそのことを

私に十四代をくれた友人のご家族に話したらしい。

「山形にまで探しに行ったらしい」と…


友人のご家族は

「そんなにまでして探してくれたのか(笑)

でも現地でも手に入らないんだよな、あのお酒は。

いいよ、うちにもう一本あるから

あの子(←ミラ)に渡してあげて 」

と…

なんと私にもう一本

貴重な十四代をプレゼントしてくださったのだ(T_T)


その十四代を

今度はもう不注意で割ったりしないように

大切に大切に抱きしめて持ち帰り

自宅で無事に開封したとき、

その香りに驚き、

さらに口にしてみて

「日本酒ってこんなに美味しいんや!」と感動した。


その日から私の「日本酒好き人生」が始まった。


十四代がなかなか手に入らないことは

身に沁みてよくわかっていたから

「十四代の他にも色々呑んでみたい」と

お給料が入ると月に1本か2本

色んなお酒を買ってみた。


当時、大きな会社に勤めていて

沢山の上司が居て

「あの子、日本酒が好きらしいで」と社内でウワサ?はひろまり、

日本酒のお陰で

派遣社員だった20代の私には職場では話せる機会もないような沢山の上司に声を掛けていただく機会が出来、

また、有難いことに

自分の給料じゃ高くて飲めないよな日本酒も沢山飲みに連れてっていただいたm(__)m


日本酒が

世代も身分もこえて色んな方とのご縁を繋いでくれた。


十四代を過失で割ってしまった

どうにか再び自力で同じお酒を手に入れたい

そこから始まった十四代探し。


結局、自力では手に入れれなかったけれど

あの出来事がなかったら

あんなに必死に探さなかっただろうから

割ってしまったことはものすごいミスではあったものの

結果的には私の思い入れが高まり

日本酒好きへの道をひらき

沢山の方々とのご縁を繋いでくれたので

今でも美味しい日本酒をいただくときに

あの、駐車場で無駄にしてしまった十四代を

思い出して頭を下げている。


あれから何十年か過ぎたが

私は今も日本酒が好きなのは変わらない。

あれから何十年か過ぎたが

今でも十四代はなかなか手に入らないのは変わらない。

(ネットでプレミアがついて3万円ぐらいで売ってるのを見かけることはあるが…)


そんな十四代は

私にとっては特別なお酒で

会うことは無理な「テレビで観るだけのアイドルスター」のような存在なのだ。

………………………………………………

さて、先日。

川越で友人たちと飲んでいた。


「十四代が好きなん?うちの冷蔵庫にあるよ。

今度持ってくるから一緒に飲む?」

ある友人が言った。


「あ、じゃあ今日このあと

うちでみんなで飲みません?」

と別の友人が言った。


「え、ちょっと待って…今日?

このあと私はあの十四代が飲めるの?

ちょ、ちょっと待って

こんないきなり当日に飲めるなんて

まだ十四代に会える心の準備が出来てない」

と私は動揺した(笑)


焼酎のバイスサワー割りを飲んでいた私の手がピタリと止まり、

運ばれてきたおつまみも

全く手がつかなくなった。

「ミラさん、どしたの?

十四代の話が出たあとから全く飲んでないやん?」

と首をかしげる友人たち。


「え。マジで今日、このあと十四代が飲めるなら

わたし、その前に他のお酒を飲んで

酔っ払ってしまいたくない!

酔ってから飲むともったいないやん

烏龍茶オーダーしていい?」

というとみんな笑った。


みんな笑うけどさ(笑)

私にとっては 

「このあと十四代飲む?」は

まるで

「このあと福山雅治(さん)が来るから一緒に飲む? 」ぐらいに緊張する出来事なのだ(笑)


一旦、烏龍茶飲んで酔いを冷まして

化粧直しぐらいはしてから

お迎えしたいお酒なのだ。


そんなこんなで…

先日は十四代と再会できた(T_T)

私が手に入れたお酒でもないのに
開封の儀まで僭越ながら私がさせてもらった(T_T)

みんなで十四代を楽しみ、
そしてなんと…
飲み残した十四代を
「持って帰っていいよ」と言ってくださり…(T_T)

また落として割ったらいけないから
私は十四代の瓶を入れたカバンを抱きしめて
タクシーで帰宅した。

翌朝、起きて冷蔵庫を開けたら
「うちの冷蔵庫に十四代が入ってる〜♡♡
夢じゃなかったんだ♡♡」と
また感動した!

話はそれるけど
私は最近土鍋でご飯を炊くようになり
お米とよく対話するようになった。

ご飯粒がツヤツヤ光っていて
それが嬉しくて
益々「大切にいただこう」って気持ちになるのだ。

お米とよく対話するようになったら
予期せず
私にとって最高の日本酒(←お米が原材料)に
再会できた!

友人にありがとう(T_T)
お米の神様ありがとう(T_T)
お酒の神様ありがとう(T_T)
…………………………………
っていう長い長い
十四代飲めたよ自慢話?に
お付き合いくださり
ありがとうございました♡

さ、また
お仕事頑張るぞ\(^o^)/