スタッフ
脚本:スコット・ブラウン&アンソニー・キング
演出:福田雄一
作詞・作曲:エディ・パーフェクト
キャスト
ビートルジュース:ジェシー
アダム:勝地 涼
バーバラ:愛加あゆ
リディア:清水美依紗
チャールズ:吉野圭吾
デリア:瀬奈じゅん
あらすじ
「ビートルジュース」とはこの物語の主人公の名です。
ビートルジュース(ジェシー)は幽霊です。
ただの幽霊ではありません。
悪魔的な力で人間を脅し、住まいから追い出すことを生業とするややこしい幽霊なのです。
日本で言うところの契約型地縛霊みたいなものでしょうか。
日本に契約型地縛霊がいるかどうかは置いておきます。
ある日、アンティーク好きな若夫婦・アダム(勝地涼)とバーバラ(愛加あゆ)が古い屋敷に引っ越してきます。
生活を満喫する間もなく、リビングの床が抜けあっけなく死亡する二人。
夫婦がまだ自分の死を受け入れられないうちに、新たな住まい購入予定者・チャールズ(吉野圭吾)リディア(清水美依紗)親子とリディアの心理カウンセラーであるデリア(瀬奈じゅん)がやってきます。
新たな購入者に嫉妬したアダムとバーバラは、どうにかして新規購入者を追い出すことができないか画策し始めます。
さて、少女リディアは、新しい家には住みたくありません。
と言うのも、彼女は最近母を亡くしており、母と住んでいた家を離れたくはなかったのです。
「もう死んでしまってもいいかも」と思い悩むリディアはいつも喪服を着、死に近い存在だったからでしょうか、人間には見えないはずの幽霊が見えるようになっていたのです。
現世に未練が残るアダムとバーバラ、三途の川の向こう側に行って母に会いたいリディア、新生活へ踏み切りたいチャールズとデリア・・・それぞれの想いをはちゃめちゃな幽霊ビートルジュースが掻き回していきます。
「ビートルジュース」は1988年に公開されたティム・バートン監督の映画です。
2019年にはブロードウェイミュージカルとして上演され、今回は東京・名古屋・大阪にて初お目見えします。
※ネタバレしているので気を付けてください
感想
「ディズニーランドに来たのかな?」と思わせるような、エンターテイメントに富んだお芝居でした。
観劇の仕方としては、難しいことを考えすぎずに盛り上げたもの勝ちなところがあります。
盛り上げるといってもコロナの関係から声を出すことは憚られるので拍手ぐらいにはなりますが、本来はピーピー指笛を吹いてノリにノリたい雰囲気ですね。
舞台と一体化した方が絶対に楽しめます。
私はすぐ裏を読もうとしたり細かいことを気にしながら楽しむ妄想観劇スタイルなので、
「リディアに幽霊が見えるのは実は死んでいるからだ!」とか
「あの蛇はなんなんだ・・・蛇・・・アダム・・・何の象徴だ!?そしてなぜ最初はセンターから出た蛇が次は下手から?サイドから襲うことを見せたいだけの演出ではあるまい」などと、始終訳のわからないこと考えていましたよ。
楽しめたことに違いはありませんが、〝エクソシスト〟や〝アナザーワールド〟などの世界観設定に馴染みがないのと、リディア以外の人間にも幽霊が見えることに切り替わっている場面はどう捉えていいのか若干困りましたね。
この舞台で最も感心したのはキャストです。
主演をはじめアンサンブルまで、ザ・プロでした。
これは私の勝手な定義なのですが、プロらしいというのはお芝居&歌が上手いだけではなく、堂々としているということが重要なんですよね。
残念ながら、知名度や実力のある役者さんでも舞台に緊張しテンパっているのが見えた途端、素人感が漂ってしまいます。
特にこの「ビートルジュース」と言う作品は別世界に誘わなければならない脚本なので難しかったことと思いますが、役者さんたちにゆとりがあり、充分、夢ワールドを満喫できましたよ。
キャスト感想
寂しがりで目立ちたがり屋の幽霊、ビートルジュースを演じたのはジェシーさんです。
いやあ、驚きました!
舞台会見で瀬奈さんが「ミュージカルスター誕生」と発言していた記事を読みましたが、内心「リップなのかなあ、瀬奈さんはリップが案外多いし」と穿った見方をしていましたが本当でした。おみそれしました。スターでした。爆誕していました。
舞台の真ん中に立つオーラや歌のパワーにも感心しましたが、なんといってもそのお芝居。
ジムキャリーかと思ったと言ったら大袈裟でしょうか。
表情の細かい動かし方や客席いじりの巧み&余裕さ、ともすれば泥臭くなってしまいがちな日本版アドリブギャグが洒脱に聞こえたから不思議です。
さりげなくパントマイムなどを取り入れた動きも素晴らしいです。
これからどんどん舞台に出て行くべき逸材だと本当に思いました。
床底に落ちてしまった幽霊、アダムを演じたのは勝地涼さんです。
テレビでは拝見していましたが、舞台では初めましての勝地さんです。
勝手にずっと前髪クネ男呼びしています。
舞台で見る勝地さんはとても柔らかく優しそうでした。憎めない感じがアダムにピッタリです。
最初のナンバーで大きく音程が違った時は「ンンン?」となりましたが、アダムは歌が上手くはないんだなということで、それなりに飲み込めました。
床底に落ちてしまった幽霊パート2、バーバラを演じたのは愛加あゆさんです。
愛加さんの〝姉さん女房〟的な存在が生きる役でしたね。
アダムをリードしながら、リディアを見守る優しさが伝わりました。
余談ですが、隣席のお客様がパンフレットを見ながら
「ちょっと、あれはカツラみたい。地毛にしか見えないけど、なんてステキなの」と言っていました。さすがタカラヅカ!
母をうしなった少女リディアを演じたのは清水美依紗さんです。
なんと言っても特出すべきは歌声ですね。
耳に優しい快適なトーンで、劇場の空気を我がものにしています。
難曲ばかりのミュージカルですが、スローナンバーよし、ロックナンバーよしでその実力に隙がありません。
これからもミュージカルで活躍することが約束されているような、これまた逸材でした。
演技も悪くはないのですが、型に嵌らず清水さんにしかできない役作りをしていくと更に磨きがかかるのではないでしょうか。
妻をうしなったチャールズを演じたのは吉野圭吾さんです。
吉野さんが舞台にいることでの安心感や安定感はありました。
ありましたが、うーん、なんでしょう、もっと良い吉野さんを知っているって思ってしまいました。
コメディ部分が意外に控えめなパパだったので、もっとグイグイ出してもよかったのではないでしょうか。
ちょっぴりオネエが入るチャールズはさすが、上手いですね。
チャールズの恋人デリアを演じたのは瀬奈じゅんさんです。
華やかですね、もうただただ華やかです。体躯が外国人サイズなので映えるったらありません。
これでもかと見せるデコルテが美しすぎます。さすがタカラヅカパート2。
役としては、悪役でしたよね?
登場はヴィランなんだと思ったのですが、ビートルジュースの生い立ちに同情する視線は一体なんなのでしょう。
ラストのリディアを見守る優しい眼差しは慈悲深さに溢れていました。
そこはドライで軽めな悪役として一貫性を持ち演じてほしかったですね。
Fin