スタッフ
脚本・作詞・作曲: ウィリー・ラッセル
演出: 日澤雄介
キャスト
ミッキー: 小林亮太・渡邉 蒼
エディ: 山田健登・島 太星
リンダ: 小向なる
サミー: 秋沢健太朗
ナレーター: 東山義久
ミスターライオンズ: ⼾井勝海
ミセスライオンズ: 瀬奈じゅん
ミセスジョンソン: 安蘭けい
あらすじ
舞台はイギリス・リヴァプール。
ミセスジョンソン(安蘭けい)は下町生まれ下町育ちで、7人の子どものママです。
彼女の夫が浮気をし家を出ていってしまったところへ、双子の妊娠が発覚します。
お金に困り、借金の山。悩むジョンソン。
このままでは子どもを施設に預けなければならないほどです。
さて、ジョンソンはメイドとしてライオンズ家に勤めています。
子どもができないライオンズ夫人(瀬奈じゅん)は、そのことをいつも憂いていました。
ジョンソンの妊娠を知り、夫の長期出張をいいことに「ひとり、ちょうだい」と言い出す夫人。
ジョンソンは迷いながらも「今のままでは施設に預けるだけ」「メイドだから毎日会える」との甘言に乗り、
ついに子どもをひとり手放してしまいます。
ジョンソンが育てることになったのがミッキー(小林亮太・渡邉蒼)、
ライオンズ夫人が育てることになったのがエディ(山田健登・島太星)です。
ジョンソンが赤ん坊のエディに関わりすぎることに嫉妬したライオンズ夫人は、ジョンソンをクビにしてしまいます。
こうして双子の兄弟は別々に育てられることになりました。
ひとりは貧しい大家族の一員として。ひとりは富裕層の跡取りとして。
ところが7歳になったふたりは街中でバッタリ出会います。
お互い兄弟と知らないまま、無邪気に遊ぶミッキーとエディ。
ミッキーは、裕福でお菓子を持っていて勉強ができるエディに魅了され、
エディは、やんちゃに行動し悪い言葉を操るミッキーに憧れます。
関わりを避けようとする母親たちと、惹かれ合う兄弟たちですが、数奇な運命に翻弄され、やがて闇へと進んでしまいます。
この作品はセリフ劇として1981年にリヴァプールで初演されています。
日本では1991年にミュージカルとして初演、以降様々なキャストで上演されている人気作品です。
感想
※ミッキー: 小林亮太さん、エディ: 山田健登さんで観劇した感想です
いやあ、面白かった、とても面白かったです。
1幕終わりで「うそ、もうそんなに時間が経った?」と思ってしまいましたよ。
文字通り、時間を忘れて楽しみました。
引き込まれるストーリー展開はもちろんのこと、曲と歌詞が素晴らしい!
〝マリリン・モンロー〟や〝長い長い日曜日〟など、わかりやすいのに詩的で秀逸でした。
エディとリンダの浮気をダンスという形で表現する比喩も素敵です。
ウィリー・ラッセル氏は脚本を手がけながら作曲も担当できるとは、なんたる才能でしょう。
羨ましい限りです。
さて、この作品は〝悪いのは誰だ〟探ししたくなる舞台です。
立場、環境、想いによって様々な意見に分かれそうです。
劇場のザワザワ声を聞いていると、「サミーが悪の道へ誘うから・・・」
「いや、ミッキーの自業自得でしょ、全部自分が起こしたことだし・・・」
「そもそもはエディ母が言い出したことだよね」
「契約したのに手放す決意ができなかったミッキー母が悪い!」
「ライオンズはきっと浮気してる」
などなど、多数意見があってそれはそれは面白いです。
ちなみに私は、ジョンソンの夫が悪いと感じました。
7人の子どもがいて、更に双子もできるというのに浮気をして出ていったんですよ?
わかりやすくダメ人間でしょう。
他の登場人物は、どこか理解できる部分のある人物ばかりでしたね。
ちなみにちなみに、
私の夫は「多人数の子育てができない国の政治が悪い」と言っていました。
ほほぅ。
素晴らしい舞台だったことを前提に、引っかかった部分は大きく2点です。
1点目は、兄弟の運命が冒頭でネタバレすること。
作家の思い入れがあるのは百も承知で、ネタバレはいるかな?
私はいりませんでしたね。
知らない方が更に楽しめたと思います。
2点目はキャスティング。
双子というにはちょっと無理がありました。
二卵性双生児だとしても、せめて背格好は揃えたほうが納得できます。
何かの拍子に同じ行動をする〝マナカナ現象〟があると、更に双子感が出たのかなと思いました。
キャスト感想
ミセスジョンソンに育てられるミッキーを演じたのは小林亮太さんです。
大きな瞳が印象的な役者さんです。
バネのように跳ねる躍動的なミッキーで、身体能力の高さが窺えました。
エディやリンダが惹かれるのもわかる親分肌で、とても魅力的に演じていましたよ。
ピョンピョン跳ねながら子ども演技をするせいか、ところどころセリフが聞き取りにくかったのは残念でしたね。
鬱状態に入ってからの方が、小林さんの真骨頂と言いますか良さが発揮できていたように思えます。
「なぜ、俺を手元に残したんだ」と母に訴える苦しみは、
実は繊細で打たれ弱い性格が仇となった象徴として、とても印象に残りました。
ミセスライオンズに育てられるエディを演じたのぱ山田健登さんです。
幼少期から青年期まで、スムーズに違和感なく演じていました。
とても可愛らしいエディです。とても可愛らしいのですが・・・
ギョロッとした目で強面なのに、何かあると泣き顔になる小林さんミッキーに対し
いつもニコニコ笑顔なのに、ふとした瞬間、冷めた殺し屋顔になるのが山田さん演じるエディです。
対照的な2人でとても相性が良かったと思いましたね。
特に印象に残っているのは、エディと学校教師の会話です。
吐出して反抗的な態度をとるわけではないが、イエスマンにはならない真の強さ。
停学になろうとも権力に屈しない強い意志を持ったエディには、山田さんの魅力が詰まっていました。
将来がとても楽しみな役者さんです。
大家族のママ、ミセスジョンソンを演じたのは安蘭けいさんです。
良かった!本当に素晴らしかった。
コケティッシュでありながら、ユニークなおばちゃん感を兼ね備えていてキュートったらありゃしなかったですよ。
群を抜いて良かったのは、歌。
安蘭さんの歌は〝歌〟ではなく〝セリフ〟として聴こえてきました。
客と対話するような歌唱により、ミセスジョンソンの気持ちが伝わりすぎるくらい、こちらへきました。
また、エディにロケットを渡すシーンの深みといったら!
隠していた愛情が漏れるリアルさに痺れてしまいました。
この話はともすれば暗くて悲しいだけになってしまう可能性も秘めているのですが
ストーリーをリードするミセスジョンソンが安蘭さんだったため、そうはなりませんでした。
大拍手です!
金持ち夫人のミセスライオンズを演じたのは瀬奈じゅんさんです。
華やかですね、ほんとパッとしているとはこのことです。
舞台人にとって輝きは大切な才能のひとつで、さすが元トップスターと感じます。
さて、役についてです。
子どもができず悩んでいるところから始まり、最後は心を病む役ですが
なんと言いますが、瀬奈さんはちゃんとして見えるんですよね。
夫のライオンズに「君はおかしいんじゃないのか」と言われ、否定していましたが
私も心の中で「そうだそうだ、ちっともおかしくないぞ」とミセスライオンズに共感していましたもの。
ジョンソンに刃物をむけていても、丘を駆け巡って(?)いても
心のタフさが見えるんですよね。
瀬奈さんが狂気の演技を手に入れると、更に良いパフォーマンスへと繋がるかもしれません。
最後に
「ライオンズはきっと浮気してる」という噂話なんですがね、私も同意です。
お相手はミス・ジョーンズだと思います。
飽きたからクビにして関係を解消したんだと思います。
ライオンズめ、悪いやっちゃ!
Fin