このハワイでの新婚旅行の締めくくりとして、
遠い異国での出来事を振り返り、
楽しかった思い出として、
すでに残さねばならぬという、寂しさを感じていた。
今がずっと続けばいいのに・・・
そんな想いは、儚いものであることは、
百も承知であるが、
自分たちを飲み込むほどの、この美しい夜空を見ていると、
このまま時が止まってしまう、
そんなことも起こっても不思議でないだろう。
と、いうことを考える予定であった。
この星空ツアーに参加し、
日本ではなかなか見れない、
数えきれないほどの星々を見ること。
そんな経験はなかなかないだろう。
なのに、
なのにである。
まさかの朝からの曇天。
曇天と書いて、曇り空。
一日フリーで過ごせる最後の日に、
わざわざおいていた、星空ツアー。
曇り空の星空ツアーが、
我々を優しく出迎えてくれた。
やはり我々らしい幕開けとなったではないか。
我々が最後に選んだオプショナルツアーは、
「スピリチュアルツアー」
ハワイの歴史を肌で感じようといった指向で、
オアフ島の史跡巡りも入っている。
そして、夜には北部に向かい、星空を観測しようという、
そんなツアーであった。
さて、さっそく集合場所に集まった私たちに、
ガイドが近づく。
例えるなら、そう。
彼は「井上陽水」
陽水はこう切り出す。
「今日のツアーは、二組だけなので」
「仲良くやっていきましょう」
これは、問題である。
相手方のペア次第では、
このツアーのすべてを左右しかねない。
先についた私たち夫婦は、ツアーそのものよりも、
これからやってくる、もう一組のペアのことが気になって、
仕方がなかった。
まさかの30分遅刻。
内心はハラワタが煮えくり返ってる我々は、
最後の力を振り絞り、笑顔で挨拶する。
仕方がない、ここは陽水の顔を立てようではないか。
我々も大人である。
ツアーワゴンは出発する。
昼スタートで、北部のノースショアまでの長いツアー。
帰りはすでに夜も更けている時間であろう。
陽水の運転するワゴンは軽快に進む。
2組のペア、計4名の人間を乗せて。
車内は陽水の軽快なトークが流れる。
彼が話す、ハワイの歴史や伝説には、
思わず聞き入ってしまうほど。
そう。陽水は、
歌だけでなく、トークでも勝負できるのだ。
ワゴンは神聖な場所をいくつも訪れる。
ガイド無しでは観光することも難しいようなところまで。


ヘイアウでは、神々の儀式や崇拝に使われている石垣が点在する。
やはり空気が違う。確かに神聖な場所が持つ独特な空気が流れていた。
さらにワゴンは進む。

クカニロコは、かつてのハワイ王族の出産場所であり、やはりとても神聖な場所であるという。

そこには霊力あらたかな岩が集まる。

陽水の説明はわかりやすく、出来の悪い生徒の我々にも、
あきらめずに教えてくれる。

野良ウミガメの挨拶を受け、
我々は北へ、ワゴンは走り出す。
ハレイワでは、石けん工場とコーヒー工場の見学に。
やはり観光客は我々しかいないようで、
とても静かであった。


サーファーの聖地、ノースショアでツアーは、目的地を迎える。

シーズンオフの聖地は人気も少なく、どこか寒々しさを感じさせていた。

いくつもの聖地を巡り、スピリチュアルな体験をしてきた我々は、
体内にマナが満たされていくのを感じていた。
ここで、夕食を済ませた我々に、
陽水はこう言う。
「最後に星空観測に行きたいと思います。」
「ここからさらに車で走りますので。」
あたりは徐々に暗くなってきている。
我々の期待はふくらみ、満天の夜空を心から、
待ち望んでいたのだった。
~⑦に続く~


