ーさらに、脳損傷の実態が示されます。


客観的な検査による現実から出発すべきです。
ー中枢性のまひと、末梢性のまひについて検討する必要があります。


石橋先生は客観から出発しており、
「脳損傷否定」の主観から決めつけたりしません。


第2の5 CNⅦ顔面神経の障害
「顔面神経の麻痺については、触診により瞼の閉じる力が弱くなっていないかをチェックします(Bergara-Wartenberg徴候)。
ーまた、下顔面筋の麻痺により、食事中、口の中の水分が口角から漏れる訴えもあります。


ー舌前3分の2に味覚障害が生じます。例えば、味覚が分からなくなるため、饅頭をいくつ食べても食べた感じがしなくなり、饅頭を一箱食べてしまう例があります。一般的に顔面神経の末梢性麻痺では舌前3分の2に味覚障害や、唾液や涙腺の分泌低下、聴覚過敏が起こるとされていますが、核上性麻痺では、顔面神経核から反対側の視床、大脳皮質味覚中枢に至る神経伝導路の傷害では片側性の舌前3分の2の味覚障害が見られます」(乙21・21ないし22頁)。


ー原告は上顔面筋(前頭筋)が正常に作動するものの、右側の前輪筋(Bergara-Wartenberg徴候)や下顔面筋(頬筋)が減弱し、右側優位に味覚障害が認められるので、「脳幹部損傷による核・核下性麻痺」ではなく、核上性麻痺である。

 

6 CNⅧ聴神経の障害
「聴神経の麻痺では、聴力低下が起こります」(乙21・25頁)。
 原告の聴力障害には、左右差がある。

 

7 CNⅨ舌咽神経、CNⅩ迷走神経の障害
「舌咽神経、迷走神経の麻痺は、嚥下困難、誤嚥という形で現れることがあり、食べ物の通過障害があるかないかを、必ず、問診で確認しておく必要があります」(乙21・27頁)。
 原告の嘔吐反射は右側(±)だが、ほぼ正常である。

 

8 CNⅩⅠ副神経
「副神経の麻痺は、末梢性の麻痺では僧帽筋麻痺のために患側の肩が下降して撫で肩となります。核上性の麻痺では、副神経が一部両側支配を受けており、さらに途中で上位頸神経が加わるために、中等度の麻痺しか起こりません。片麻痺では斜頸に至る例はありませんが、頭を左右に回旋させてもらい左右の胸鎖乳突筋を触診すると左右の筋力の違いがわかります」(乙21・28頁)。
 原告にも、右側に中等度の麻痺が起きている。

 

9 小脳症状
「小脳症状は運動失調として現れます。企図振戦(何か目的のあることをすると震えてくる症状)や測定異常(目的物めがけて運動している時に、目的物の空間的位置に対する実行指令が障害されており目的物に到着しないこと)などは捉えやすい症状です」(乙21・29頁)。
 原告は検査上、正常である。(つづく)