ー平成15年基準で脳損傷の診断を確認。
あくまで、それが基礎。
ーそのうえで、平成25年基準により、
脳損傷の原因を推測できる。
ー後者を絶対化すると、被災者が救済されません。

 

 外傷性脳損傷を「TBI」、Glasgow昏睡尺度を「GCS」、甲4を「平成15年基準」、甲5を「平成15年報告書」、甲7を「平成25年基準」、『ベッドサイドの神経の診かた』(149ないし128頁及び甲9)を『ベッドサイド』、「LECTURE 軽度外傷性脳損傷」(10)を「2011年論文」、「軽度外傷性脳損傷の実際 学際的アプローチと多重的脳画像診断学」(11)を「2015年論文」という。

 

第3

1、WHO・MTBI定義の構造

2、意識障害の推定方法
3、本件事故へのWHO定義のあてはめ
   

4、本件TBIの原因
 本件受傷後に外傷後健忘または「意識喪失かつ外傷後健忘」が起きたので、WHO・MTBI定義の第一要件(4項目のうち、1つ以上)に該当する。さらに、救急隊がJCS0=意識清明を記録し、これはGCS15点相当なので、WHO定義の第二要件(GCS13ないし15点)に該当する。
 平成25年基準の医学的な根拠である厚生労働科学研究において、「MTBI定義の操作的定義は、TBIに起因する高次脳機能障害の取扱いを共通化するためには有用である」と結論づけられている(甲7別添論文の結論)。
 TBIは自然の経過で発症せず、必ず原因がある。本件受傷がWHOのMTBI定義ないし平成25年基準に該当することから、本件TBIの原因は本件事故である。
 なお、原告の外傷後健忘が24時間未満でなく、24時間以上(平成18年4月16日午後3時25分よりあとまで、記憶が欠落)の可能性もある。そうすると、下記の分類によれば、軽度でなく中度のTBIということになる。
ー表 TBIの受傷度の分類(DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル)

損傷の特徴

軽度TBI

中度TBI

重度TBI

意識消失(LOC)

30

30分~24時間

24時間

外傷後健忘(PTA)

24時間

24時間~7

7

GCS

1315

912

38

 その場合でも「中度の意識障害」が起きた本件事故が、TBIの原因であることに変わりはない。 (つづく)