日本の社会保険の歴史は長いです。厚生労働省(旧厚生省・旧労働省)は、健康保険について『健康保険法の解釈と運用』、労災保険について『労災保険 業務災害および通勤災害認定の理論と実際』という本を、歴代書いてきました。(労災の障害基準を交通事故に準用)

 戦前は、業務上の傷病も・業務外の傷病も健康保険から給付されましたが、戦後、健康保険と労災保険に分かれました。しかし、国民皆保険という立場は変わらないので、すき間を作らないことが強調されています。

 また、厚生労働省はこの本で、健康保険制度の性格を解説しています。

・社会保険は、保険すべき危険からみるとき、労災保険・疾病保険・年金保険・失業保険の4種に分類できる。健康保険は、そのうちの疾病保険だ。

・健康保険は、強制保険だ。保険の中でも私保険が任意保険であるのに対して、国際労働機関(ILO)が「社会保険は強制保険としてのみ考えうる」と宣言しているように、社会保険は強制保険を原則としている。ここで、強制保険の効果も論じられています。

・疾病保険(健康保険)・失業保険は短期保険に属し、年金保険は長期保険に属する。

 交通事故による被害=疾病(短期保険的)、障害・死亡(長期保険的)のうち本来、逸失利益の部分は社会保険でまかない、慰謝料は民事賠償でということだと思います。

 軽度外傷性脳損傷がありふれた病気であることや、被災者がさんざん苦しめられている状況を見ますと、この領域も私保険でなく、社会保険として、オバマのような医療改革が必要なのだと思います。