6/4友の会の例会を開きました。中国地方のかたを含め、はじめてみえたかたも多かったです。労災にせよ・交通事故にせよ、当初の診断が不十分で脳損傷が把握されない場合、あとから正確に診断されるわけですが、はじめ軽くてあとに重いのはおかしいと相手側が言ってきます。

 それに対して、二つのことが言えます。

・あとから、精神的機能障害=高次脳機能障害・発作性意識障害ほか、身体性機能障害=脳神経まひ・運動知覚麻痺・膀胱直腸障害が、綿密に検査されてわかる。はじめの医師が診断していないだけで、客観的事実はあった。

・外傷性脳損傷でも、びまん性軸索損傷という病態。無数の神経細胞の部分が、脳の実質全域について、多発性に損傷するが、その軸索の損傷は瞬間の出来事でなく、一定の時間の幅を持った過程である。

 Greenfieldの神経病理学・第8版に、

「外傷で損傷された軸索の大多数は、はじめに考えられていたのとは異なり、衝撃を受けたときに機械的に断裂することはない。それに代わって、大多数の軸索は、変性が進行して、数時間かけて徐々に軸索の断裂まで進んでいく。・・・6時間から12時間かけて軸索近位部は遠位部との連続性を失い、遠位部軸索はワーラー変性に陥って行く。」とあります。


 また、労災・交通事故の共通の基準である、厚生労働省の精神・神経系統の障害基準は、画像に見えない脳・脊髄損傷の場合、通常労務可能な脳損傷につき14級としますが、労務困難な場合の障害等級が設定されていません。

 そのため、監督署の段階で、労災の理論と実際に沿って5級以上の等級を認めたり、裁判で勝訴確定しているかたがいるのに反し、画像偏重で切られているかたが労働保険審査会や裁判で争っています。

 最近の交通事故裁判の判決では、WHOの診断基準が引用されていますが、びまん性軸索損傷についての古い分類(画像や、受傷後の意識障害の長さに偏重)にまどわされており、WHOについて正確な理解が求められます。

 厚生労働省は、石綿疾病などについて必ずしも疾患概念が確立せずとも、被災者保護で基準を作っており、また、WHOやILOの知見に沿って基準を見直さなければなりません。

 参院厚生労働委員会4/20で、軽度外傷性脳損傷への取り組みが約束されており、改革へ着実に進んでいます。

http://kokkai.ndl.go.jp/

 次回例会は、7/30(金)13:30-16:00 ひらの亀戸ひまわり診療所・友の会事務所4Fにて