あるマジシャンが1万円札を貸すよう求めてきた。
マジシャンはお札を受け取ると、即座に破り始めた。
ありがちなマジックである。
この手のものであれば最後に無事なお札が戻ってきてお終いだろうと、誰もがそう思っていた。
案の定、マジシャンは破れたお札を手の中に入れた後にこう言った。
「あなたの1万円札はもう元通りになっています」
しかし勢いよく手を開いてみると、中には何もない。
マジシャン自身も相当驚いているようである。
狼狽しながらあちこちを探し回り、今にも泣き出しそうな表情でマジシャンが言った。
「元通りになったあなたのお札は、なんとわたしの財布の中にありました」