ミラモナの「小説、書いてみる」宣言から数日。

とにかくやってみる精神で、悩まずとりあえず早速、時間かけずささっと何か書いてみました。


始まり

雷雷雷雷雷


 私の勤務するまんじゅう工場のパートは12時のチャイムで一斉に1時間のお昼休憩に入る。


 休憩室で私はいつも一人、昼食を取る。自宅を出て駅までの通り道にあるセブンイレブンで買うおにぎり一つと何か甘い系のパン。私の昼ごはんはいつもこの組み合わせ。300円以下になるようにその日の気分や棚の在庫状況からおにぎりやパンはいつも違うのを選ぶ。

 工場の最寄駅からはマイクロバスで朝みんなで乗っていく。工場は駅から歩くと遠いから。

 マイクロバスの出る乗り場近くにもコンビニはあるんだけれど、工場の人たちに会ったらなんか嫌なので自宅の近くで買っていくようにしている。


 休憩室で、今日も高橋さんがグループのみんなとご飯を食べている。


 私の秘密。私の好きな人。高橋光子さん。


 高橋さんは、何歳なのかはっきりとは知らないけど四十代後半かな。五十代ではないと思う。170センチ近い大柄で骨格もしっかりしていて、ふくよかな体型をしているどこにでもいるようなパートの主婦。旦那さんと中学生と高校生の子供がいる。いかにも、優しいお母さんという感じ。見た目がとにかく好み。

 話したことはないけど、休憩室で高橋さんがグループの人と話してるのをいつも聞いている。高橋さんはおしゃべりではなく、聞き役が多いけどね。


 今日も高橋さんはお弁当。家族にもお弁当をいつも作っているみたい。今日は、手作りっぽい小さなハンバーグが入っているのが見える。ブロッコリーみたいな緑のものとプチトマトと卵焼きは大体いつも入ってる。白いご飯の上には少しふりかけがかかってる。今日は、なんか黄色いやつ。

 高橋さんのお弁当美味しそう。食べてみたい。


 いつも通り高橋さんのお弁当をこっそりチェックしていたら、高橋さんのグループの近藤さんが私のそばを通る時

「あ、なかじまさん、今日田中さんは休みなの?」

と聞いてきた。


「ど、ど、ど、た、たな」


 突然話しかけられたら何も答えられない。田中さんは私のチームの人だから私に聞いたんだと思う。それだけ。


 それだけなのに、緊張してしまう。


「田中さん、下の子がインフルエンザになって今日休みみたいよー」

 向こうのテーブルから他の人が答えた。


「そうなんだ、今インフルエンザ流行ってるもんね。急に子供がなったら大変だよねー。今週はもう来れないかもねー」

 とすぐに話は移ったし、誰も私のことなんて気にしてない。もちろん高橋さんも。


 田中さんが今日休みなのは知ってたけど理由までは知らない。知ってる人は誰から聞いて知ってるんだろう。社員さんから聞くのかな。それにしてもお子さんがインフルエンザだったら田中さんいなくてうちのチームの仕事今週回るのかな。大変になったらちょっと嫌だな。


 ちなみに、私の名前はナカジマではなくて、ナカシマなんだけど。近藤さんはいつもなかじまさんと私のことをいうけど訂正できずそのまま。


 近藤さんは声も大きくて少し怖いけど、たまに私に話しかけてくれる。私がきちんと答えられなくてもあまり気にしてる様子もたぶんなくてすぐに離れて他の人と話す。私が悪いんだけど私のことを避けたり話してくれない人も多いから嬉しい。でもいつも聞かれたことにまともに答えることもできなくて恥ずかしいし本当に嫌だ。


 高橋さんには名前を呼ばれたことないけど、私がナカシマと知ってるんだろうか。ナカジマじゃないよ。自分でもナカシマでもナカジマでもどっちだっていいんだけど、もし知られてなかったら少し悲しい。


 高橋さんは、おまんじゅうを一つ一つ手で包む工程のチーム。私は粉の重さを測ったりするチーム。勤務中はあまり自分の現場を離れられないのでほとんど機会がなくてちゃんと見られないんだけど、高橋さんのあのふっくらした大きな手でおまんじゅうを丁寧に一つ一つ包んでいる姿は、なんだか、自分がほわっと優しく温かく包まれているような幸せな気持ちになる。いつでも思い出せるように、たまに見れたら瞼に焼きつけて、目の裏に収納してる。私の秘密。


 高橋さん、好き。


 笑うと目がなくなるところが好き。声が高くて大きくなくて優しい喋り方のところも好き。みつこ、って名前もかわいい。学生時代の友達にはみっちゃん、って呼ばれてそうな感じ。おなかやお尻を隠すようなぶかっとしたチュニックみたいなのいつも着てるのも可愛い。勤務中は制服だけど帰る時とか少し見れる。高橋さんは自転車通勤。


 私は何も求めてない。できたら少しお話しはしてみたいといつも思っているけど、実際にはうまく話せないだろうし見ているだけで幸せ。


 そもそも、四人家族のお母さんの高橋さんが好き。それを壊したいなんて全く思ってもない。自分のものにしたいとか、自分と何か性的なことをしたいとかされたいなんて思ったこともない。高橋さんの手に包まれるおまんじゅうの気持ちになることはあるけど、身体のこととは違う。そんな高橋さんは見たくないと言った方が正しいかも。生々しいというか。知りたくない。今の高橋さんだから好き。人の奥さんで人のお母さんの高橋さんが好き。


 もちろん、この気持ちを伝えようなんて思ってない。私みたいな女に告白されても気持ち悪いだけ。いくら高橋さんが優しくても、困るだろう。気持ち悪いと思われたくない。困らせたくない。


 だから、これは秘密。


 友達もいないから誰にも言ったこともない。


 でも、実は、この秘密を知っている人たちが他にいる。

 探偵社ピピットの人たち。


 高橋さんのことをもっと知りたい。知るだけでいい。家庭を壊すとか思いを伝えたいなんて思ってない。そんな勝手なこと思うわけがない。


 でも、ただ、高橋さんのことを知りたい。どんなふうに暮らして、家族の前ではどんなふうなのか。それを見てみたい。


 探偵社ピピットさんに依頼した。これは私のもう一つの秘密。

 

 まんじゅう工場の前に勤めていた前の工場でも好きだったパートさんの調査をピピットさんに依頼したことがあるから依頼はこれで二回目。まんじゅう工場のパートで稼いだお金では、たくさんは依頼できない。大切に貯めたお金。前回もお世話になった探偵社の黒川さんとは先月面談と打ち合わせをして、初回調査の10万円の入金はした。

 いよいよ来週、初回の調査になる。緊張するけど楽しみ。


 39年間、男性とも女性とも一度もお付き合いをしたことはない。好きになるのは女性。子供の頃から友達もいないし、学歴も職歴も趣味も何も持ってない。容姿も最悪。人とうまく話せない。

 人より劣ってると思う部分しかない。そんな私だけど、私は「探偵に依頼してる人」なんだと思うと少しだけ自分が特別な、他とは違う人になった気がして少しだけ気持ちが良い。


〜続く〜


雷雷雷雷雷


どうでしたでしょうか!!


どうも何も、「ミラモナ小説書きます」から想像したものと、かなり予想外な感じだったのではないですか?笑

え、まんじゅう????ナカジマ???と

面食らってわりと今画面の前で困惑している読者がまざまざとわかってニヤニヤしてます。


感想お待ちしてます。