松本人志の事件が週刊誌沙汰になって事件現場が「高級ホテル最上階スイート」だったことが私の気持にずっと引っ掛かってて。
「高級ホテル最上階スイート」をキーワードとして私自身の「事件とは正反対の体験」が浮かび上がってきました。
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昔、映画俳優の田宮二郎さんが夜中の音楽番組の司会をなさったことがあった。
タキシードを隆(りゅう)と着こなし、バーカウンターみたいなハイチェアに浅く腰掛け斜に構えて、オールバックに撫でつけたヘアスタイルの顔かたちが外国の俳優みたいに堂々として。
先だって亡くなった山本陽子さんが「好きになった方は既婚者だった」と言ってらした方です。「華麗なる一族」「白い巨塔」初回TVドラマの主演俳優。
さて、私はその頃、ホテル・オークラ旧ショッピング・アーケードで働いていて店番しながらいつも霞が関ビルを見上げていました。
高層ビルといえば霞が関ビル一つ切りだったのが、新宿に47階建て「京王プラザホテル」が建つという。
アーケードの店の先輩の「高校時代のお友だち」は外国航空会社スチュワーデスで、おっとりとしたお嬢さん。お兄さんが芸能プロダクション社長って華々しい!
彼女がお店に来て、「開業前の京王プラザホテル最上階でTV番組の撮影があるんだけど一緒に行かない?遅くなるけど…」私は「行きます。行きます!」
先輩と三人で晩御飯は、ホテルオークラ・プールサイド・テラス・レストランの美味しい五目焼きそば食べて、いざ新宿に。
「京王プラザホテル」のビルの外壁は星空に伸びて輝き、ニューヨークみたい!ゾクゾクします。
でもまだ、内装未完、エレベーターは作業用の一機稼働してるだけ。エレベータ内にも建築資材があって匂いがする。47階まで時間が掛ること。耳が変になっちゃう。
最上階では、建設業者とホテル関係者見守る中、TV機材、照明・何台ものカメラ・吊るすマイクスタンド、そして床一面にのたうつコード。
それらを扱う30人くらいのスタッフは皆沈黙し緊張感だけがその場を支配する。
私が入って来た防火扉みたいな鉄の大扉は、「番組が始まったら開けてはいけない。ここが閉まったら帰れないよ。しずかにして」って誰かが。
お友だちはスタッフの間を縫って奥に歩み入りお兄さん探しに。私は興奮止まぬも後ずさりして壁の花。
これから毎週、「プラザ47」というタイトルの音楽番組が、京王プラザホテル最上階から日曜夜11時半(たぶん)生中継される。
その司会者が田宮二郎さん。
立ち並ぶスタッフたちの中心に田宮二郎さんはいるのかいないのか全然姿見えず。
でも異次元の核心に近付いてるのを感じます。
私たちから遅れて鉄の扉を入ってきた中年男性がいました。茶色っぽいチェックの厚手オーバーを着て、手には長方形の大きなボール箱。薄いけれど長い方の一辺1mもありそうな、たぶん和菓子の詰め合わせ?
そして、誰に渡したら良いか途方に暮れたように私を見た。
老松の練り切り