地下鉄サリン事件を引き起こした似非宗教団体は事件が大真面目な修行の行き着く先だったと詭弁を弄した!

アメリカでその報に接した村上は、7年前(サリン事件に先立つ)に旅したアトス半島に於けるギリシャ正教の修行とサリン犯グループの偽りの修行との激しい落差を思ったに違いありません。

村上は、被害者インタビューと加害グループインタビューを実施することで、修行と呼ぶものの天と地の落差を、落差の地獄を手ずから埋め合わせずには居られなかったのかも。

 

 

ギリシャ正教大小8つの修道院によって立つアトス半島という地、そも異界であるアトスを活写する村上の文章は引き締まり小説ほどの読み応えがあります。すなわちこの異界のそこここから村上春樹の小説が匂い立っているのです。

 

ここであの小説にこの出来事が使われているなどと具体的な箇所を指摘するのは無粋でしょう。

いつか私がこの論を出版する運びになるときまで黙っていましょう。

俯瞰するとこの紀行文が村上の小説の土台作りに、作者の意図とは関わりなく、多大に寄与していたことが確認出来ます。