セルフポートレートとは、
簡単に言うと「自撮り」です。
自撮りと聞くと、
ほとんどの方はスマホを目の前に掲げて
可愛いポーズで写るものを
イメージされると思います。
対してセルフポートレートは、
三脚やストロボをセットして
一眼カメラで自分を撮影するスタイルです。
─「セルフポートレート」の魅力
Rinaty | Shasha
小さな穴を通った光が壁などに外の景色を映すことは、紀元前の昔(紀元前15世紀頃)からよく知られていた。
この仕組みを利用して作られたピンホールカメラが、いわばカメラの原点。
ただし、初期のピンホールカメラは、カメラといっても撮影機能はなく、針穴の反対側にあるすりガラスのスクリーンに、景色などを映すだけの装置であった。
このピンホールカメラでできる像は元の物体と上下左右が反転した倒立像となる。
これは光が直進するからだ。
つまり、ピンホールで光が交差するために上下左右が反転した像ができるのである。
三千年が過ぎた15世紀頃、突如ヨーロッパの画家たちの間で、ピンホールカメラを少し発展させたもの、箱にレンズをつけた装置(カメラ・オブスキュラ)での写生が行われるようになった。
16世紀になると、ピンホールの代わりに凸レンズを使ったカメラ・オブスキュラが登場する。
1826年にフランスのニエプス兄弟が、アスファルトの感光材料としてカメラ・オブスキュラを改良し、1枚の写真を撮影する。
1839年に同じくフランスのルイ・ダゲールが、銀メッキした銅板を感光材料として使う「タゲレオタイプ」という技術を発表する。
19世紀後半、感光材料の改良が相次ぎ、1888年に現在の写真フィルムに繋がる「柔らかいために巻き取ってあつかえる」フィルムが、アメリカのイーストマン・コダック社から発売される。
ここまでが足早に駆け抜けた《カメラの歴史》である。
さて、カメラ・オブスキュラが画家たちの間で流行する少し前の15世紀に、北ヨーロッパでもっとも重要な画家の一人とみなされていたヤン・ファン・エイクがいる。
ヤン・ファン・エイク(1395年以前─1441年7月9日)は初期フランドル派で後援者はブルゴーニュ公フィリップ3世である。
初期フランドル派とは、15世紀から16世紀にかけて北方ルネサンス期(アルプス以北の北ヨーロッパの美術運動を意味すると同時に、イタリア以外での全ヨーロッパのルネサンス運動の意味でもある)のブルゴーニュ領ネーデルラントで活躍した芸術家たちとその作品群を指す美術用語である。
初期フランドル派は、フランドル地方の大都市などで特に大きな成功をおさめただけでなく、西洋美術史上の観点からも極めて重要な美術運動であると言及されている。
とりわけ、ヤン・ファン・エイクが1434年に描きあげた『アルノルフィーニ夫妻像』の肖像画はその寓意性、象徴性に複雑な意味を持たせた西洋絵画の嚆矢とみなされている。
さらに垂直遠近法を採用した最初期の絵画作品の一つと言われている。
画面中央の鏡に注目を。
大変小さなスペースに全てのディテールが詰め込まれ驚異的であるが、これは凸面ガラスでもある。
凸面ガラスの歪みが驚くほど正確に表現されている。
さらに近寄ってみると、窓辺に無造作に置かれたオレンジが見える。
しかし、もっと興味深いのは、アルノルフィーニ夫妻の後ろに登場する二人の人物である。
通常、赤い服を着た男性は画家自身と解釈されている。
するともう一人の青いドレスを着た人物は誰なのか?
もしかしたら鑑賞者である私たち自身かもしれない。
もし、鑑賞者が私たち自身であるならば、一瞬にして今から600年前の世界にタイムスリップしたかのような奇妙な感覚に襲われる。
これは過去の鑑賞者も、今現在の私たちも、そして未来の人々も、ヤン・ファン・エイクの魔法にかけられ続けているからに他ならない。
マイケル・ジャクソンのアルバム『Dangerous』のカバーアートは、現代におけるヤン・ファン・エイクの『アルノルフィーニ夫妻像』と言っても差し支えないだろう。
何しろ数え切れないほどの寓意的なシンボルに溢れている。
ところで、マイケル・ジャクソンの趣味の一つに写真撮影がある。
そうすると、今回の前半の《カメラの歴史》は当然知っている、と想定しておそらく間違いないだろう。
アルバム『Dangerous』の中央下に地球が描かれている。
この地球に近寄ると上下が反転していることに気づかれるだろう。
何故、地球が反転しているのか?
《カメラの歴史》と何か関係があるのか?
それとも別の解釈があるのか?
何れにしても寓意的なシンボルであることは間違いない。
秋の夜長に考えてみるのも一興である。
Thank you for the upload.
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