旅の驚きは心に新鮮な波動を呼んで愉しいものです。
それは旅の醍醐味とも云えるでしょう。
旅の初めの6日間は甥っ子が貸してくれた車があったので二人で近在の街をドライブして回りました。
甥っ子が車を貸してくれた理由は彼が免許証を持っていなかったからです。
半年前にその古いメルセデスベンツと出会った時、
『よーしおいらも絶対に免許を取るぞ」って思ったらしい。
それからお金を貯めて自動車学校へ通ったそうです。
そしてついに免許証を貰える日が来ました。
それが5月の17日。
私たちの来訪後、7日目の午前中でした。
せっかく手に入れたメルセデスも自分では運転出来ないので私たちに貸してくれたのです。
その日の午後、喜色満面でやって来た彼と翌日ドライブに行く約束をしました。
翌日、約束の時間に彼がやって来ました。
行く先はゴールドベルグ。
ヨーロッパ最大の隕石が作ったクレーターの跡が見られる場所です。
ギョエΣ(・ω・ノ)ノ!
そ、
そんな凄い所があるのぉ?
チョット行ってみたいです。
何故ならば、
鉱物好きには有名なあのモルダバイト有るじゃんね。
あれって隕石に依って産まれた天然ガラスの事何です。
旧チェコスロバキアのモルダウ川流域で見つかる天然ガラスのことだけど、
なぜそこに天然のガラスが産まれたか、
その理由が実は私たちが翌日向かおうとしてるゴールドベルグに有るというのです。
∑ヾ( ̄0 ̄;ノそれってどういう事よ?
興味津々。
旧チェコスロバキアとここって一体何百キロメートル離れているのでしょうか。
きっとうーんと遠いと思います。
国境をはるかに越えているでしょう。
ところが、私たちがとても歩いて行けるとは思えない遥か彼方へも、
一瞬にして飛んで行ってしまうような出来事が、
古のある日この地球に起きました。
巨大隕石落下です。
(((゜д゜;)))
隕石はものすごい重力とスピードと熱と光りを伴って、地球に向かって落ちて来ました。
そのとてつもないエネルギーで
隕石が地球にぶち当たろうとするその直前でさえ
すでに地球の表面はあまりの熱量に溶け始めていました。
大地が溶鉱炉の中の鉄の様に真っ赤に燃えたぎっていたのです。
その煮えたぎる坩堝の真ん中へついに隕石落下。
その瞬間大きな衝撃に吹き飛ばされた熱々の鉱物の固まりは
溶解したまま現在旧チェコスロバキアと呼ばれる地に流れる川、
モルダウ川流域にバッシャーンと着陸したと思って下さい。
その辺の大地にしたら熱々に溶けたジェルの様なリキッドが空から突然下りて来て
さぞかしビックリした事でしょう。
その物体は南ドイツの大地や樹木が溶けたものでした。
あまりの熱量に当たった瞬間、
今度はその辺リの大地をすっかり溶かしてしまいました。
二つの遠く離れた大地が溶けて融合して新しい物質が産まれた瞬間です。
それがモルダウ川に落ちて固まり天然のガラスとなったのです。
神秘の緑色をしたその天然のガラスが現在モルダバイトと呼ばれています。
もちろんパワーストーンの世界でも有名ですよね。
私たちは偶然にもその昔、
インド滞在のモルダバイト研究家と出会っています。
ドイツ人ですが、
モルダバイト形成の過程を辿り、天然ガラスについてライプチッヒ大学で勉強した人でした。
彼からモルダバイトについての色々な話を聞いたのを覚えています。
が、まさかその大元の隕石落下の地が
生まれ育った街からそう遠くない所にあったとは
つれ合いも全く知らなかったようです。
お互いに産まれ故郷の話まではしなかったのでしょうね。
話を聞いた時点では気がついていなかったのでした。
モルダウ川は遠いチェコスロバキヤのボヘミア地方に端を発し広大なボヘミヤの森を抜けて
ドナウ川に合流します。
そのドナウ川の源泉はまた
今から向かうゴールドベルグからほど近い所に有るのです。
背後にロマンチックなストーリーが見え隠れするようなお話では有りませんか。
( ̄▽+ ̄*)
今回昔のガイドブックを開いてみたら、
ゴールドベルグの事が出ていました。
それを見てぜひ行ってみたい気持ちになったのです。
私たちはその時に研究家から幾つかのモルダバイトの欠片を譲ってもらって
持っています。
そのガラスが今居るこの大地から飛びたって、
遠い東の地でその父祖となった事を知り
何かのご縁を感じ興味を持ったのでした。
その日は滞在中一番の好天気となり、
太陽の陽射しを浴びて私たちはゴールドベルグを目指して車を走らせました。
甥っ子もここで生まれここで育っているのに
ゴールドベルグについては聞いた事もないと云ってます。
それで古いメルセデスにスマホのナビを接続して走りました。
南ドイツのこの辺りは街を抜けると次の街までの間に
必ず田園風景や森が広がっています。
この街と次の街が看板一つで区切られているという事が有りません。
森を抜けて次の街に入る形が中世もしくはそれ以前から聯綿と続いているようです。
私にはそれがとても素敵に思えました。
大地が広いのです。
小一時間緑の中を走った頃、左手に小高い丘が見えるようになりました。
近づくにつれ大きな岩が突き出すように立っているのが見え、
その様子がどうもあのガイドブックに出ていた写真とよく似て見えるのです。
「あれがゴールドベルグかな」私がそう口にすると
良し、行ってみようという事になりました。
もしもそこがゴールドベルグでなかったとしてもそれはそれで好いよ。
と三人とも納得したのです。
それ程少し先に見える岩を抱いた丘は魅力的でした。
頂上まで歩きやすそうななだらかな坂道で小さな花が咲き乱れています。
私たちは丘の麓ギリギリの地点まで車を乗り入れ茂みに止めました。
辺りには人っ子一人見当たりません。
周囲には只々広い麦畑と広大な菜の花畑が広がっていました。
ー続くー
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