待望のネコが来たのは私の誕生日の朝でした。
飼い主が、「びっくりして飛び出してしまうかもしれないから、すぐに開けないほうがいいよ。」というので、たまたまつれ合いが不在だったこともあり、箱にいれておいたまま、彼の帰りを待つことにしました。
午後になって帰ってきたつれ合いにそのことを伝えると、彼は[大丈夫だよ」と、一言言って箱を開けてしまったのです。
抱いてなでてやろうと思っていたつれ合いの手をすり抜けて、あっと言うまに一匹が、家の奥のほうに逃げていきました。それに気を取られている間に、もう一匹もどこかに消えてしまい、それっきり2匹ともどこに身を潜めたのか、気配を消してしまいました。
夕方辺りが暗くなった頃、お互いを呼び合う声が聞こえ、どこにいるか大体分かりました。
1匹は2階、もう一匹は玄関に隠れているようです。
見知らぬ場所で、もう何時間も、一人ぼっちでふるえているのです。
可哀そうに、と思っても私たちにはどうしてあげることも出来ません。近づけばパニックになってしまうから。
夜になって皆が帰った後、私がひとり居間で横になっていると、2匹の猫が激しくお互いを呼び合い、走り出てきました。私の目の前で感動の再開です。
体をすり寄せて喜びを分かち合い、不安そうに辺りを眺めまわしたその時、初めて私がいることに気がついた猫たちは、一目散に玄関のほうへ逃げ去ってしまいました。
あとで判ったことなのですが、この猫たちはまだ母乳以外に口にしたことがないようなのです。
考えてみれば、朝母親から離されて以来、一日中のまず食わずでいるわけですから、おなかも空いているでしょうにね。
わたしたちはその話を聞いてびっくりしました。
缶詰の食事に慣れていたり、もうドライフードは食べられますよ、とか。
そんな風に親離れが出来ているから、連れてこられたのだと、思い込んでいたのです。
今になって、それがまったくこちら側だけの思い込みだったと知りました。
とりあえず、玄関に逃げ込んだらしいので、水と缶詰のえさを置いて、その夜はそのまま休みました。