2.もう一度山ぶどうを・・・ | 星の輪ネットワーク

星の輪ネットワーク

金 銀花の独学パン工房 .
山ぶどうから生まれた自家製天然酵母で焼くパンを楽しみ、緑に囲まれて暮らすワンダーフルな日々の出来事を綴ります。

 ふくらまなかったパンは、固くて、重たくて、半生状態でした。私たちがそのパンを食べきるまでの間、酵母は、回復のための、それなりの手当てを受けていたので、もう一度(いつものパン)を焼いて見る事にしました。


酵母の様子が、あまり変わっていなかったので、今回は全体で300グラムの小さい目のパンにしておきました。案の定、一晩寝かせてもやはり、さほど膨らみませんでした。


 どうも今回の酵母はあまりうまく出来なかったようです。それが、とても残念でならなくて、出来るならば今一度、山ぶどうを手に入れたい、そしてもう一度、今度はもっと慎重に酵母を作ってみたい、という思いが、強い願望となって心に育っていったのでした。


 でもこのぶどうが届いてから、もう早や幾日も過ぎているのし、秋も益々深まって、もう今頃までぶどうの残っている所なんか、有りはしないだろう、と思う半面、もしかしたら・・・と奇跡を待つような気持ちを捨てきれずにいたのです。


そんな折、予期せぬ事の成り行きから、「天気が良いから山を歩こう」という話が急に決まり、二日続きで紅葉の山を歩く事になりました。一日目は、黒川という場所を歩きました。友人から届いたぶどうは、この辺りで採れたものでしたが、私たちが行った時には、もう一粒も残っておらず、やっぱりだめだったかとがっかりしました。


 二日目はもっと山奥の原生林を歩こうと言うことになりました。その場所はあまりに急峻であるが故に、人間を立ち入らせること無く、自然のままに育ったオリジナルフォレストだと、山男が言うのです。そのそそり立つ山々の間を縫うように、谷底には川が流れています。その両側は、切り立った岩が、さまざまな興味深い地形を生み出していて、その中の一つのポイントに、誰が、いつ名づけたのか、「巫女淵」 と呼ばれる場所があるというのです。


 私たちはその淵に向かって歩きました。紅葉も盛りを少し過ぎたところで、大いに目を楽しませることも出来ました。巫女淵を見た後、尚も歩いていくと、先頭を歩いていた者が、「ぶどうが落ちてるに・・・」と大声を上げました。彼は私の願いを知りません。が、私はその声を聞いて、ドキッとしました。(ぶどうがある?)もしかしたらぶどうが手に入るかもしれません。