六月の風が吹き抜ける今の時期になると、
決まって思い出す光景がある。
かつて農家が肩を並べていた私の故郷で、
田植えが終わった直後に行われていた「百万遍」という行事だ。
村では当番制で、当たった家の広い座敷に大人も子どもも集まった。
部屋いっぱいに広げられた大きない数珠を全員で回し、
無事に田植えを終えられた感謝と、
秋の豊作を祈って念仏を唱える。
その厳かで温かな時間は、
幼心にも村全体が一つになっているような安心感を与えてくれた。
行事のもう一つの楽しみは、
当番の家の婦人たちが用意してくれるおむすびだった。
一人に二つずつ振る舞われるそれは、大きな丸い、
真っ白な塩むすびと、小豆の入った赤飯のおむすび。
炊きたてのお米の甘みと小豆の香りがたまらなく、
あんなにおいしいおむすびは後にも先にもない。
今、同じ季節を迎え、ふとあの味を思い出す。
それは単なる食べ物ではなく、
家族や隣人と共に労い合いしていた一体感。
あの頃の村の幸福な記憶そのもの。








